夕凪

『ねじりはちまき
キッチンの片付けがはじまるよ!
バレンタインの時に引っ張り出して
とりあえずでその辺に積みっぱなしになっている調理道具たち。
おつかれさま!
今年もありがとうございました!
お姉ちゃんたちはまた何度もお世話になるみたいだけど
散らかりようが激しすぎるわ
机に飛び散ったチョコのかけらが後から後から見つかるわで
バレンタイン前にかぶった三角巾のお仕事は今度はほこりよけ。
甘い匂いのキッチンはまもなく
すっきりスペースの余裕が出来る予定です。
夕凪もずいぶん張り切ったなあって
懐かしく思い返しながら
ぶつけてへこんだあとをなでたりする大掃除。
今年の夕凪の
忘れられないバレンタインになるまでに
長い間のお付き合い。
もう友達みたいなものだよね。
お兄ちゃんと夕凪のバレンタインを
忘れないでいてくれる人が
ここにもいるのかもしれないね。
人じゃなくて
冷たい道具たち。
固い感触をさわるとよみがえる
夕凪の汗をかき手を滑らせながらの努力。
みんなのおかげで
いいバレンタインだったね。
来年もお兄ちゃんにチョコレートを作るんだよ。
たまに──
お台所を手伝うかもしれないから
少し上手になっているかもしれない夕凪だね。
お兄ちゃん、見て!
布巾が出てきたの。
白い手ぬぐいだったのになあ。
洗ったら落ちるかな?
食べ残しをてきぱきと拭いたみたいな汚れ。
やっぱりなめると甘いかな──
うーん、やめとくか。
きれいなてぬぐいを
ねじって気合を入れた2月のはじめ。
技術はあとからどうにでもなる、
やる気さえあれば他に何もいらないと思った
あの日から
ついにどきどきだった目的の時間が過ぎて
結局はどうなのか
気合だけでいけたのか
よくわからないままだったね。
おいしいものを食べて
楽しい時間を過ごしたら
あとは片付けだ!
ふええ……
バレンタインで張り切った後なんだから
これは甘えん坊の夕凪でも
お兄ちゃんに手伝ってなんて言えないよぉ……