氷柱

『デザイア』
ちょっと目を離すと
すぐに羽目を外すのが小さい子供たち。
今日みたいによく晴れて薄着が気持ちいい日でも
大人を驚かせたくて仮装を重ね着したりね。
まだ見ぬ新鮮なおばけではあるけれど
汗をかいてるし……
夕方には冷え込んできてお風呂が人気、といっても
着替えさせるたびに一緒にお風呂に入っているのでは
肌がつるつるぴかぴかになるではすまないぐったりボディになりそう。
よく見てあげないとちゃんと洗わないし。
拭いてあげないといつまでも裸で遊んでいるし。
子供とはそういうもの。
それにしても、今年もめんどくさい季節が来たわね。
ファンシーでかわいい格好をしてみたいって言うけど
うちのみんなはけっこう即物的なんだから
おかしをもらえるお祭りという歴史的に正しいのかどうなのかはっきり言えない認識が
とりあえず最初にあるんじゃないかという気がする。
お祭りの盛り上がりなんて
たいてい食べ物と結びついているわけで
そう考えると、ハロウィンらしいお菓子がキャンディになるイメージも
他にもよくあるおもちやチョコレートやおだんごやケーキなんかとはかぶらない
適当なラインだったのかもね。
え、ホワイトデー?
なんだかクッキーがイエスの返答だとかマシュマロがノーとかマイルールを押し付けあって
結局誰もがどうでもよくなったアレね。
やっぱりお祭りは、あらかじめ準備のときはしっかりしたほうがいいけど
盛り上がるときは多少の些事は吹き飛ばしていくべきなのかしらね。
別にホワイトデーで盛り上がりたくもないけど。
ハロウィンもそんなにね。
かわいいって言われても、ほら。
うちの家族がしたいなら止めようとまではしないから
春風姉様が試作しているかぼちゃのお菓子も食べるわよ?
そういえばあの流行りそうで流行らなかった、贈り物に本を選ぶ日のあれも
もう節操なくただ単に形にかこつけて
バウムクーヘンミルフィーユを食べる日くらいにしておけばよかったんだわ。
選ぶ本もだいたい
学校の図書館で読めるし……
ってなるんだから。
あれっ、でも考えてみたら
別に何か食べてばっかりでもない七夕っていうのもあるっけ。
人が欲望に忠実になることで有名な七夕。
ああ、なんということ。
結局のところ人間を動かすのは際限のない欲望でしかないのね。
ま、七夕とか今度のハロウィンは子供が楽しめるならいいか。
たくさん地獄からかわいいおばけのお友達が来てくれるといいわね。
そんなお祭りじゃないかもしれないけど。
少なくとも、イベントごとになるとつい
私たちが喜ぶメニュー開発に張り切る人がいる我が家だから
食べ過ぎに注意、と
それだけは確かなことね。