『変わりなく』
春の気候は不安定。
このあたりはまだ強い冷たい風が吹いたり
激しい雨が一面視界を埋め尽くす白銀の雪に変わったりなんてことは
さすがに三月になったらまずない、とはいっても
傘に吹き込んだ雨でずぶ濡れのまま帰ってくることはありえるわ。
雨の音が強くなるとなぜかテンションが上がって
ちびっこが並んで窓ぎわにいることもあるし。
そんな時に郵便が届いて
かっぱを着てずぶ濡れの郵便屋さんが
荷物はなるべく濡れないように気をつけて差し出そうとする周りを
あまりの濡れっぷりに感心したのか
おじゃまをしてうろうろする子もいる。
びっしょりになった手を拭いてあげるのは誰だと思っているのかしら。
ちょうどその場に居合わせる
お姉ちゃんである麗の仕事なのよ!
でも、ふかふかの柔らかいタオルを洗面所にたたんで用意しておくのは
私じゃなくてさらにそのお姉ちゃんの春風姉様だけどね。
まあそのへんは助け合い、ということ。
雪が積もって足場も悪くつるつる滑るのも困るけど
すでに冬本番の寒さは通り過ぎたとしても
雨は雨でなかなか大変だし、晴れたらまたいろいろ用事もあるわけで
このごろの浮つきがちな気持ちを抑えて日々をゆっくり
落ち着いて堅実に過ごすのが大事。
新しい季節がやって来る気配がして
まるで春を呼ぶイベントみたいだ、と
ちょうどこの時期のホワイトデーをやけにうっとり待つ人も見かけるけれど
まあ春風姉様がそんな様子だということだけど
そんなこと雛祭りのときも言っていた気がする。
バレンタインもやけに盛り上がってそんな話をしていたような。
そもそも節分が暦の上では春を迎える行事だって聞いたし
もう少しさかのぼれば確かお正月だって春を迎えたみたいでおめでたいとかだったわけで
ちょっと考えたらうっとおしいくらい春を待ちすぎ。
今さらホワイトデーくらいでそんなに季節が変わる気もしないわ。
だいたい、あげるものだと決まっているから感謝のつもりもあるし
こちらの気持ちでチョコレートをあげたというだけで
それなのにお返しに期待するのもなんだかはしたないと思うわけで
かといってせっかくの用意を断るつもりもないし
なんだかむずむずしながら迎えないといけなくなるのよね!
ホワイトデー。
もっとさらりと普通の日みたいにしていられたら
私も困惑などしないで感謝して受け取ればいいので
愛とか春めいた予感を乗せるのはちょっと違うと思うな。
本当なら私の人生において永遠に必要のなかった男の人という存在と
それに向き合う関係と
いったいどうやって気持ちを片付けていったらいいのか
わからないし
考えても答えは出ないから
もういいわ!
その日になったら、なるようになると思って今は忘れる。
別にクッキーやマシュマロが春を運ぶわけではなし。
ああ、でもいちごのジャムや季節に合わせた味を楽しめたりするかも、
とはいえそんな上品で繊細なアイテムを選ぶような人でもないような、
まあ気持ちが込められた贈り物をもらえるならありがたいものですから、その時に考えます。
今日みたいにちょっと寒さが戻ったら
これまで過ごした厳しい寒さを思い出して
いったいどんなふうに過ごしてきたか
なんでもない毎日の結果が問われると思うの。
あったかいおそばに
ねぎをちゃんときれいに刻んでさつまあげも食べやすく切っておいて
七味唐辛子はお好みで。
テーブルのどこか、よく使う子の近くの添えておきます。
あなたは七味唐辛子が好きなのか、どっちだったかな……
おかわりするほうだったような気がするな?
季節の変わり目も体調を維持するのはいつだって平常心で過ごす日頃の心構え。
私だってこの冬、おそばにうどんに鍋物
冬を乗り越えるお手伝いはずいぶん鍛えられました。
おかわりだってみんなの分、
今日は何も問題なく
たくさん用意してあるわ!