立夏

『すべころ』
あかるいリカだよ!
冷たい北風だってリカをとめられない。
ちょびっと、ひるむけど……
ぎりぎりで立ち直りながら考える。
冬こそ気合入れて行かなくっちゃ
このまましぼんじゃう!
ミニスカートふりふり元気を出して
日陰の道を何にも気にせず走り抜けたら
途中ですべって
ころんだよ!
ちょー勢いついた強烈なおしりもちだったよ……
このところよく食べて肉をつけておいてよかった!
タフなリッカだったから耐えられたダメージ。
お肉も役に立つものだね。
何もない道って
意外と派手にすべるの。
一瞬足がふわっとなって
天と地がなくなって
爽快な一瞬のあと
どしーん!
こわっ!
しかも帰ってきて、痛かったーって話すと
氷柱ちゃんが怒って
走って転ぶって
いつまでも子供じゃないでしょ!
おやつ抜き!
そ、そんな……
おやつがくれた生身の鎧が怪我から守ってくれたのに
そのエネルギー源まで取り上げるなんて
あんまりだー!
次に転んだときにお尻が大変なことになるじゃない!
あれ? 転ばなければいいのか?
今度は、リカでもちゃんと気をつけて
ゆっくり落ち着いて凍りそうな道へ踏み出し、
大丈夫そうだったら
だんだん調子に乗ってジャンプするよ。
みらいへ!
そらたかくを目指して!
高い高いとってもきれいな透き通った冬の空に向かって飛び上がる。
ほらね?
どうしても止まるわけないじゃない!
リッカが!
おやつ抜きはまるで効果がないって
オニーチャンからも氷柱ちゃんに言ってよー。
こどもじゃないが、こどもっぽい
そんなリカによく効くのはねえ、
むしろごほうびだとかーじゃないかな?
無事に帰ったらおやつ増量。
あ、どう考えても何事もなく普通に帰れないからだめか……
元気に明るく
とっても楽しい笑顔でおうちに帰れたら
おやつもうひとつおまけ!
どうかな?
大切なことでしょ?
リカなら特に何も考えなくても成功しやすい!
というか
転んでもあんまり泣いて帰ったりしない子。
話を聞いた周りのほうが大げさに反応するくらいだしさ。
あ、心配かけちゃいけないよね、うん。
でもリッカは滑って転んでもけろっとしてるんだよ。
本人がいちばんなんでもない顔をしている
という。
大事なみんなを困らせるのはいけないことだけど。
これからはたぶん
リカが転んだお尻をはたく氷柱ちゃんが悲しそうにしてたのを思い出して
ダッシュの野生児がちょっと早めにブレーキをかけるかもしれない。
でもね、リカは大丈夫。
小さい頃からよく転んで慣れているもん。
いっつもおうちでいちばんの笑顔で帰ってきて
ばつが悪いときだけてへへって恥ずかしそうにするくらい。
どんなことがあったって
誰よりも楽しくしていることだけは変わらないから
へっこんだときに元に戻るのは早い!
少しくらいこけたっていいんだー。
とか言いつつも、しばらくは急に走ったりしないけど。
お尻が痛い間くらいは、ちゃんとね。
転ばないのは無理なので
できれば……なるべく……ここだけの話……たまには気をつけるとして
リカの場合は、転んでもすぐ泣いたりしない。
そんな感じの良い子でいられたらいいと思うの。
サンタさんはどう思うかなあ?
プレゼントのお願いも、大家族だし、
かわいい小さい子たちがでっかいお願いしたいみたいだから譲ることにして
わりとつつましく決めたんだよ!
豪華クルージングのランチタイムを
おひとりさま高級一万円プランじゃなくて
五千円ほどの庶民的なゼイタクでいいのです。
オニーチャンと行ってみたいの。
ふたりっきりのムードがある船のたび。
まあお客さんは他にもいるわけだが
海の上!
眺めのいい街並み!
どうしても盛り上がるようなあまりに日常を離れたシチュエーションがあるわけじゃん。
好きな人と行ってみたいなあ……
いい子にしている度合いで
もしかしたら五千円ほどでも今年のリッカにはあげられないよってなると
転んで滑って反省していてもそれでもやっぱり止まらない子は
パックの焼き鳥十本くらいのクリスマスプレゼントに落ち着くのだろうか?
そんなことになったら──
けっこうおいしそうだな?
とにかく楽しいクリスマスを過ごせる予感をぐんぐんふくらませることにかけては
他のどんな子にも負けない自信があるんだから
あとは当日を待つばかり。
やっぱり25日となるとチケットをとるのも
いくらサンタさんといえど難しそうだし
そこまで無茶は言いません。
リカもそのくらいわかっている年頃なんだから。
冬休みに行けたらいいなというのが希望。
大丈夫、どんな日だっていいことを最高の思い出にすることならナンバーワンだよ。
万が一の時はやきとりでもばっちりいけるよ。
オニーチャンと一緒にいたいだけのお願いなんだもの。
あったかいうちにはんぶんこにして食べようね。