海晴

『トラブルメイカー』
気まぐれな猫みたいにたまにやって来る
陽だまりがゆれる暖かい日。
白い午後の光がいつもよりなんだか色づいているよう。
ホットケーキのてっぺんで溶けはじめたバターだったり
ちらっと視線を向けると隅っこに健気な冬の花が揺れているガラス窓だとか
そんな意味もなくうれしい感じ。
この思いがけない幸せはまるで
長い間付き合っていたらもう家族みたいな気持ちがしていた人から
ある日突然けじめをつけるつもりで前振りも一切ないプロポーズといったような。
まあ、今のところそんなあては全くなくて
ただ一人思い浮かぶ人はぶきっちょで子供っぽくて
でも真摯で、やっぱりまだあんまり慣れていない。
背が高くて頼りになる男の子でも
年下になるとどうしてもお姉さんぶってみたくなるものなのかしらね。
そもそもお姉さんなんだけどね?
名実共に、間違いなく。
年の差と言うほどではない……はずだけど
そのへん男子としてはどうなのか?
疑問は止まらず
興味は溢れ続けるばかり。
年に一度きりの夢のクリスマスプレゼントには
本当の心が覗ける眼鏡──
お願いすればきっと届いたと思うんだけどな。
もう乙女の祈りを込めても良かったお手紙の締め切りは過ぎて
恋の手練手管を駆使しつつ
正面から向き合って聞き出すしかない。
奇策を探ってガードをかいくぐるよりも最後はまっすぐにね。
我が家には策をめぐらそうとする素直じゃない子もいるかもしれない。
伸び盛りの悩みの時期をあたたかく見守りながら
本当はこうあるべきの姿を見せ付けつつ
ほんの一歩だけのリードを奪ってしまおう。
ねえ、年上ってどう?
ときめく?
それとも心やすらぐお付き合いができそうな気もしそう?
一緒に行きたい場所はどこ?
たとえば、クリスマスには間に合わなくてもいいお願いなら
新年最初のご来光をきんきんに透き通った空気の中、
すぐ近くで二人きりで体験したいというヒカルちゃんの希望や
なぜかサンタさんにプレゼントをもらえることより
オーストラリアなら空飛ぶトナカイのソリじゃなくてサーフィンでやってくるなら
特訓すれば何とかなりそうだから
同じサンタへの憧れをぽつんと漏らした人の首根っこを引っつかんで一緒に弟子入りする覚悟の
プレゼントをもらうより自立心があるといっていいのかよくわからないけど
なんだか立派な志をはぐくみはじめたヒカルちゃんや
きれいでかわいいケーキというものにみんなが惹かれる気持ちがよくわからなくて
味が良ければ後はおなかに入ったらだいたい一緒では?
ちょっとまわりの雰囲気に感化されて
そんな気持ちを知りたくなってきたらしくて
ケーキバイキングのお店を相談に来るヒカルちゃんのような……
このごろ波乱を呼んでいるリッカちゃんのクルージングランチタイムの願いは
最初はそんなムチャなと話題になった後
わりと実現可能な範囲にあるあたりがますます周囲に大きな影響を与えているらしく
そういうのであれば実は自分も……
と、今になって爆弾発言が次々と飛び出すきっかけになりつつあるみたいなの。
いちばんゆらゆらあっちにこっちに揺れ動いているヒカルちゃんを
ようやくの芽生えをあたたかく見守りつつ
口コミのおいしいお店を教える立場にある点と
自分の気持ちをまっすぐ見つめてためらわない女の度胸で一歩リードを狙う
そんな一大決心お姉ちゃんが案内したいお勧めデートスポットは
今だからこそおいしい甘さがある冬のアイスクリーム屋さん!
クリスマス限定メニューも、早くもすでにはじまっている。
雪がよく似合う本物のきれいな冬が来るまでに
チャンスを逃さず今を狙っていく
フットワークの良さとも言えるし
そのつもりになったらがまんができない気の短さでもあるかもしれない。
ともかく、キミのことが好きなお姉ちゃんは、いつも素直がいちばんだと知っているので
照れくさくたって、考えなしだって立ち止まる理由にならないつもりで
少しクリスマスには早いのもそこだけは都合よく忘れた顔をして
そろそろサンタさんのプレゼントが届いて
キミに家族でいちばんの幸せなあたたかい気持ちでいてほしいお願いが
私は良い子だから早めに叶ってしまうよね、って
いつも迷わず突き進んでいくので
ちょっと困ったときは、仕方のないお姉ちゃんだなあって顔をして
二人で歩く同じ道を
楽しいときは正直に。
お姉さんぶりたい彼女をたくさん見つめながら
手をつないでついて来てね。