真璃

『それぞれの』
ついにもうすぐ!
待っていたその時がやってくるのね。
一年を良い子で過ごしたか果たして?
人の身では覆せない神聖な審判が
とうとう下されるクリスマス。
枕元にちょこんと吊るされた
カラフルな靴下の中身は
子供たちみんなが一年を立派に過ごした証。
もちろんマリーは揺るがぬ自信があっても
それでもなぜかちょっとどきどき
その日が来るまで胸の鼓動は鳴りっぱなしなんて
サンタさんもなかなか乙女心をわかっている人。
寸前まで来たら
もはやどうにかなるものでもないのだから
胸を張って、もう迷ったりせず
堂々と構えながら待たなくちゃ。
結果はもう変えようがない……
だけど今からでも何とかなるかも、
わずかな希望にすがる子は
珍しくこの一年で一番いい子にしているんだから
ちゃーんとよくできましたって褒めてあげるのも
ま、この時期ならではのマリーお姉さんの楽しみよね。
心を込めて書いたサンタさんのお手紙は
きっともう北の遠い国へ届いて
たぶん大きなおなかをほがらかに揺らしているの。
あともうちょっとのこんな日は
想像しながらむずむずして
そろそろもう、箱に入ってラッピングが済んだ頃?
気が早いかな……
しっかりと落ち着いて北を見つめながら想像すると
あれ、はるかな遠いトナカイの国はあっちでよかったんだっけ?
まあいいの。
鈴の音が近づいてくることを思って待っている寒い日が楽しいんだもの。
空想をジャマしたら許さない。
くすぐってしまうわよ!
さくらは今になって思い直して
あれがいい、これにすればよかった
でも最初のお願いがやっぱりいちばんかなってうろうろ落ち着かないの。
きっとそうして迷うのも大事。
おねだり上手で人の心を動かすのが得意なかわいいレディに近づくチャンス。
うだうだ迷って、難しい顔で悩んで
いつかマリーみたいにみんな広い心で受け入れられるプリンセスになるといいわね。
さくらが今日のびっくりしたお顔で
なんかすごい!
マリーお姉ちゃんみたいになれますように!
サンタさんにもっと早くお願いできていたら、クリスマスには運命は変わっていた?
霙お姉ちゃんもすごい!
なれますように!
だとか。
そうね、霙お姉ちゃまは……
明るくてめげない強さ、
のらりくらりとしたところがあるかもしれないわね!
うんうん。
小さいときには憧れる人が多いのもいいわよね。
本当にその人たちが立派ですごくて
もしかしたらぜんぜん追いつけないんじゃないかって現実を知るとき
それでも自分は追いつきたいから。
同じくらいになんてなれないとびんびんしびれるほどわかっていても変わらない。
マリーのできることをして追い続けるの。
いつまでも目標ばっかりなのよ、
たとえ打ちひしがれたって。
落ち込むときに傷だらけで立ち上がって
自分の力を信じられるようになるまで
子供っぽい憧れは捨てないで
何もあきらめないでいていいんだわ。
小さな夢のつぼみがふくらみ出すさくらは、いつか通り過ぎた懐かしい頃のマリーの姿。
憧れを追いかけようとしているさくらは、これからマリーがたどりつこうとしている未来。
泣き虫で甘えん坊のかわいい妹で
強い力を持ったライバルね!
お互いのエネルギーをぶつけ合いながら
自分たちが信じる明日へと歩いていく。
いい子にするって
よくできた誰かの真似をすることじゃないでしょ?
自分の気持ちにいつも素直に
女の子はいじけていられないわ。
胸で育つすてきな願いに目を背けず
愛するものに力いっぱいの愛を注ぐことをためらわない。
それが女王のあるべき姿。
マリーがいつも喜びの笑顔で
覚悟を決めて裸足で進み続ける茨の道、
誰でも向き合う自分自身の決めた道を進むのが
本当にすばらしいこと。
サンタさんだって
立派なマリーを誇らしく思うに決まっているのよ。
だから素直でいれば
きっとわるい子なんかじゃない。
お歳暮で届いた高級お菓子の詰め合わせセットを
今はお菓子がいっぱいあるから
あとで足りなくなりそうなお正月にとっておきましょうと
どこかにしまいこむホタお姉ちゃまも堅実でたくましいし
とっておくなんてもったいない、
今すぐ食べたいわ!
と、まるで勝ち目のない挑戦だとわかっていてもあきらめず
冒険の棚を探しはじめる自分に素直なマリーだって
きっと世界で一番の
フェルゼンが自慢できる良い子なんだと知っている。
心配しないで待っていてね!
見つけたらちゃんとみんなで分けてあげるつもりだもん。
そんなうれしい時はフェルゼンもいちばん近くにいてくれなくちゃ
マリーはふくれてしまうんだから。