星花

『おやつのお行儀』
あまいおやつに
しおっからいのも
辛い味がきいているのもいいし
ゆげをたててほっかほっかでも
しっとり舌の上で広がるあじだとか。
もう暑い日や、つい大慌てで縁側からお部屋に駆け込む
おちょうしものの大はしゃぎもそんなになくて。
なかなか空いていることもないですから!
お庭に面したガラスのサッシなどは。
ひなたぼっこのユキちゃんや、春風お姉ちゃんたちに
やーっ!
いまいきまーす!
声をかけて玄関から回ってまいります。
汗っかきがおうちに飛び込んでくるわけでもないので
需要は少し控えめになったと思われた
ジューシーな味わい。
いや、意外とそうでもなく
乾燥しがちな喉に
おみかんがほどよく染み渡るのではないか?
ありがたいおみかん
フレッシュながらも落ち着くやさしい味なの。
でもおやつはこのごろわりと
ふっくら暖かい焼き菓子になる日が多くなっているかな?
それと蒸したできたてのカスタードプリンを少し冷まして
滑らかな舌触りを楽しめるようになるまでがまんしたり。
本当は冷やしたカラメルや生クリーム、ブルーベリーソース、
チョコレートソースに合わせたいから
いったん冷蔵庫で寝かせてからにしたいと蛍お姉ちゃんが言うけど
そこまでがまんは
ムリですよね?
小さい子も。
ちょっと大きくなった子たちだって
ほんのりあったか
柔らかプリンの誘惑には勝ち目がないの。
中がまだ熱いときもあるからそこは注意ですよ!
お好きなトッピングでゆっくりと
お皿の上のきれいでおいしい完成度の高い一つの宇宙を
美術品を前にするように
優雅に午後を楽しむという態度で挑むのが
こだわりの蛍お姉ちゃんを今後も説得するときの上手なコツ。
という霙お姉ちゃんやマリーちゃんの知恵です。
おいしく楽しくが、夏でも冬でも変わることなくおやつには大事なんだから。
そして仲良く
にぎやかに。
できれば上品に。
だけどマナーのひとつの型だけにはまらないように
うれしい時間を
一番大事に、忘れないでいるといいの。
星花はどうしても
こぼさないで、きれいに
隣の子のお世話を焼きたくて
ちょっと口うるさい傾向があるみたいなの。
お説教くさい?
だってみんなといられて楽しいんだもん
油断したら余計な口出しも
してしまうの。
しゅーん。
落ち着かなきゃ。
おやつのときこそあわてずに
ゆっくり流れる時間を大事に
心に余裕を持って!
ですよね。
プリンと思われた蒸し器からは
ある日は見た目もボリュームのある蒸しパン、
人気のレーズン入りが喝采を浴びてあらわれたり。
いよいよ季節はこの時を迎え
クリスマスプディングの試作品まで今日は切り分けてもらえて
これも上手に寝かせたらおいしくなるものだけど
蛍お姉ちゃんもテンションがあがってしまうのが
季節のイベントと
この時期ならではの、着飾るような華やかなメニュー。
あるいはここ一番、晴れの舞台の学芸会みたいに緊張しているかもしれない。
重ねた練習を、胸の前に重ねた手に抱きしめているのかもしれない。
こないだの小学校の学芸会がちょっとそうだったかも。
いつもの体育館の景色が
着飾り、慣れない大人びたおしゃれをしたら変わっているような!
そんな感じに似ている──
あんまり似てない?
とにかくかわいい
特別な、季節ごとのメニュー。
でもクリスマスプディング
おやつというか晩ごはんの軽食に近いし
テーブルクロスを買えて、ポッキーをグラスに入れて置いてみて自由にどうぞ、の
ムードを重視してみても
まだお外はうららかに明るく
カレンダーも少し気が早い。
ツリーも飾りつけもまだですものね。
みんなの声も、おやつとして目新しい新鮮さがあると氷柱お姉ちゃんは認めたものの
あまい馴染みのあるプリンがまだやっぱり人気みたいで
リクエストの声が多かったです。
クリスマスメニューの開発は
まだ続くみたい。
とろんと甘い夢みたいなクリスマスか
スパイシーなお料理が刺激的なのか
まだ予断を許さない状況らしく
あれかこれかと予想の声は
時に熱く盛り上がり
またあるときはくすくす笑いが漏れてしまうように和やかに
冬の星花の大事な時間を彩ってくれています。