ヒカル

『雪のあと』
朝からあまり天気が良くなかった日で
ぽつぽつと降る雨に
朝の走り込みをあきらめた分
今日は、私が中心になって
家の中でずいぶんチビたちと遊んだから
みんながもう疲れて早く休んだみたいで
どうやら一人だけで寂しく起きている
音もない、冬の夜更け。
なぜ今日は、私だけが眠れないんだろう?
気持ちが紅白を見る準備を始めているから?
それとも、
ゆうべ、雪が降りそうだった冷たい夜よりも
いい天気になるらしい明日を待っている今のほうが
なんだかもっと静かな気がして
落ち着かなくなってしまったから……
なのだろうか。
いつもならとっくに眠りについている時間。
冬の夜中を過ごす時間が、こんなにも静かなものだったのか
比べることはできないけれど。
明日はだらしなく寝過ごしてみる覚悟を決めようか、
それとも、どうせ眠れないのなら
今のうちに冬休みの宿題を進めて
少しでも、きっちりした生活をしている感覚を維持したらいいのか?
でもどうしても
じっとしていられなくなりそうで
そんなに遅くまで布団の中にいるなんて、自分でもあんまりできない想像だけど。
明日したいことをいろいろ考えて
ぐずぐず眠れないままでいるのも、珍しいことだ。
雨のせい?
それとも、遠足が楽しみな子供の気分なのか、
今日できなかった分
寒い風が吹いたって、してみたいことが
年末には結構あるから。
大荷物ほど後回しにしがちな大掃除も
いよいよ追い詰められてギリギリにならないよう
せめて大晦日まで持ち越さずに、済ませておきたいし。
盛んに湯気を立てているおせち料理作りの準備も
たいていはつまみ食いが見つかって追い出されるけど
せっかくおいしいものができる仕事、
不器用でも最後までその場にちゃんと居合わせて
手伝いたい気持ちも純粋なのに。
さくらくらいまでなら、味見で許されるけど
私が同じ言い訳をして手を出すと
すぐにお正月の分までなくなってしまうから。
今のところは
多めについたおもちの山を切り分ける作業で我慢。
もっといろいろ
華やかなお正月の準備をするには
何かが足りないような。
いったいなんだろう。
足りないのは
育ちの上品さ?
同じ家で育っているのに?
一つ上の年と一つ下の年を
ふわふわいいにおいがする女の子らしい趣味で囲まれているのに
同じ家族で年が近くても、ずいぶん違うものなんだ。
でも同じ年のオマエとは近い部分がある気がする。
すぐ調子に乗るところとか。
二人そろって、何事も脳天気すぎるって言われることが多いような。
つまり同じ年に生まれたことが理由になる
干支が持つ魔力?
来年の未年生まれの子が
私たちの新しい家族としてやってくるなら
どんな性格になりそうか、
私が考えたってまったく意味のない想像をしてみても
まだ時間がたっぷり余る
寝付けない長い夜。
やっぱりオマエは
みんなにそうしないではいられないみたいに、
新しい家族のことも、氷柱に怒られそうなほどかわいがっているのかな。
うちにやって来る子は幸せだな。
こんなに愛してくれる人がたくさんいるんだから。
それにしても明日と明後日で終わりの一年、
何かやり残したことあったかな。
ふだんはあんまり考えないことばっかり浮かんで
やっぱり、体を動かすのをサボった日は
どうもいつもの調子が出ないみたいだな!
一番早起きの私が役目を任されている
日課の日めくりカレンダーも、明日の朝にはあと二枚。
のはずなんだけど
早くお正月が来てほしいのか
自分たちもお手伝いをしたくなったのかわからないけど
虹子と青空とあさひが
今日の分、明日の分、明後日の大晦日の分を
うれしそうに持って行ってしまった。
一年の記念!
宝物にしてしまっておくんだって言ってた。
いや、あさひは言わないけど。
虹子と青空が。
あとで見直して
ちゃんと思い出せるのかな?
大きくなったら
こんなことがあった一年だった、って教えてやらなくちゃ。
今年もなんだかんだ
春も夏も、ついこのあいだだった秋も、今だって騒がしい出来事ばかりのような。
たまにはこうやって
静かに思い返す時間だって
珍しく私にもあるものなんだと
知る日もあるような。
そんな時間を過ごしていると、
なんだかいつもこんなふうにして
穏やかな気分で家族のことを思うのも
今年一年、いつも私がそうして過ごしていたような気分にもなってきて
どこから振り返っていいのか迷う
あれこれ考え事の夜、
たまにはこうして
同じ家で眠っているオマエのことを
違う部屋から思い返す寂しい夜も
過ごしていたような……
明日は雪は降らないみたいだけど
いい天気になったら、真っ先に私が起こしに行くかもしれないぞ。
今年をそうしてずっと過ごしていたみたいに
もうあと少しになった日々も
たぶん来年も、急に変わらないで
同じ家で過ごしている、
他に私にできることが何もないみたいに
夢中になって
ずっとそうしていたいと言っている、
かもしれない。
明日の朝起きたときにわかること。
もうあとわずかになった今年の日々を
いつもの毎日みたいに、気持ちのいい早起きで迎えられたらいいな。