海晴

『ほっと』
夜のまだ暗いうちから。
藍色の夜空は
おひさまもぐっすり眠っていることを思わせる。
きっと、寒さがしみ込むこんな時間には
出番が来るまで
まだどこかで
そばにいる誰かにお布団をかけなおしてもらっているかしら。
日が長い頃ならぼうっと空のはしが白んでくる時間も
今は心細くなるくらい
暗い夜の色が変わりだす気配も見えないほど
今日も長い時間
お仕事お疲れ様のお月様は
そろそろ大あくびでおやすみの準備をはじめた?
急いで帰りたい気持ちは
それはもう、息を吐きかける凍える手のひらがひりひりするくらい
痛いほどわかるけど
でも山の端に沈むまで、まだもう少しがんばって
さみしい私の気持ちを照らしてくれなくちゃ。
時刻は早朝。
気持ちはまだ全然
朝が来たなんて思えなくても
今日のお仕事のために
張り切っていこう!
と、なるはずの気持ちも
どうもいよいよ
寒さに押されて
引っ込みがち。
ううーっ、
やっぱり太陽が出てない時間は
さむいさむい
さむーいっ!
もう。
どうしてこうなの?
手をこすっても
ほっぺただって
どんどん熱を奪われていくものだから
ひええー
外に出て行くのがつらいよー!
冬なんて
きらいだー!
夜のばかー!
星空をにらみつけると
そこには
澄んだ空気にきらきらまたたくお星様が笑っている。
もうっ。
あんなに輝いていたら
怒る気にもならないじゃない。
いらいらも
ぐずぐずも
見守る夜のきらめきが
冬の風にすっと溶かしていって
残るのは。
とにかくなんだか
頭の中も空っぽになってくるようで
早く暖かいところに行こう
忙しいお天気お姉さんと大学生の二足のわらじも
いつもこんなふうに冷たい夜の中を歩くときばかりじゃない、
ひとりじゃないもの、
ちゃんと役目を果たして
今日の用事が全部済んだら
そうだ、いつもより早く家に帰って
あたたかく
迎えてもらわないと
こんな凍えるハートは
そう簡単には溶けていかないわ。
わかるよね?
ね、弟くん。
やっぱり忙しい用事が多くて
思ったようには早く帰れないかもしれないけど
もう帰ったときには
熱烈に
お姉ちゃんに向かっていく熱い気持ちを
思う存分照れずにぶつけてくれないと。
愛する気持ちって
どうやって伝えるのか
私たちだってまだ未熟だけど
でも、大事なこと。
自分でも迷いながら
いっぱい教えてきた
お姉ちゃんとしては
キミが熱い気持ちを
私たちに届けようとしていることを
もう知っている。
それを表に出すのが難しいときがあることも。
この先もっと
私たちの家族の
ありあまる元気に
巻き込まれ続けるんだから
クールでなんて
いられないよ。
わからない?
こうするの!
わからないままで
体が勝手に動き出す通りに。
冷えた体を
暖めてあげたいと思ったら
何も迷わなくていいと
キミももうすぐ気がつくよ。
もしかしたら、もう知っているかもしれない。
私たちが、何が一番うれしいと思うのか。
それはキミが
素直な気持ちのままで行動できること。
そして、私たちの
素直な愛をそのまま止められずにぶつけても
受け止めてもらえる
たくましい男の子でいてくれることだよ。
海晴お姉ちゃん、
ただいま帰りました!
早くおうちのみんなの愛で
暖を取るため
寒い道のりだって缶コーヒーで耐え抜いた
冷えてしまった体に
一番ほしいものを
すぐにください!