星花

『給食着』
白い帽子に
白いエプロン。
ミートソースの染みはどう?
目立たない?
毎日楽しみにして
はしゃいでこぼしてしまうこともあるくらい。
しっかりしないと!
星花は
もう四年生なのですから!
なぜか休日に
給食着を来ているのは
うっかりしたわけでもなく
はしゃいでテンション高めなのでもなく
いえ、今日はついいつもよりはしゃいでいたから
そのために結果としての給食着なのですけど
たった今
この瞬間は真剣。
お手伝い中なの。
たまには給食着も
似合っていて
かわいいねーって
褒めてもらえても
つい浮かれすぎてしまわないで
はい!
って答えて
それからは、まじめに。
でも、かわいいって言ってもらえて
はい、って返事をしたら
自分でも認めたみたいになってしまう?
かといって
まさかまさか、なんて
手を振るのも
せっかく褒めてもらえたのになって気がするし
もし本当にかわいいなら
うれしいと思うし……
麗ちゃんが自分でエプロンを用意して
背筋を伸ばして隣で手伝っている姿を見ていると
今日はエプロンを用意できなかった星花が
うっかりしすぎたなあって思い出したり
麗ちゃんは給食着を身につけても
たぶんかわいいっていうより
きれいなお姉ちゃんだから
こういう小学生っぽい服は
似合わない気もするし。
そうすると
給食着が似合っていてかわいい、って
褒め言葉なの!?
大変なことに気がついてしまった星花。
本当は、かわいいじゃなくて
きれいなお姉さんって言ってもらいたいのでしょうか?
それは当分
無理な気がするなあ……
それに、おうちでやっぱりエプロンが乾かなくて
給食着に着替えた夕凪ちゃんと吹雪ちゃんを見ると
星花もやっぱり
かわいいな、って思うから
褒め言葉でいいのかな。
でも、三人並ぶと
妹たちってかわいいですというより
同じクラスの仲間みたい。
星花はお姉ちゃんなのに
差がない!
え、えーっ!?
伸びてないの!?
ううん、
伸びてるよね。
追いつかれているだけなんだよね……
すくすく育っている
小学生チーム。
すぐにきれいなお姉さんになれなくたって
たぶん
もう少しで。
とりあえず、気を取り直してまじめにお手伝い。
余計なことを考えてボーっとしている暇はない
晩ごはん前の忙しい時間なの。
エプロンが乾かなかったから
落ち込んでいるよりは
目の前のお仕事に集中!
といっても
しょせんはお手伝いだから、サラダの準備と
すぐに皿を並べ終わって
向こうで待っていてね、で
自分で脱いだ分と
吹雪ちゃんと
まだ着たままでおにいちゃんのお皿に配膳したい夕凪ちゃんからひっぺがした分を
洗濯籠に運びます。
明日いっぱいで
乾くかな?
お兄ちゃんのお皿に盛る必要は
たぶんトンカツだと必要ないと思うよ。
夕凪ちゃんがその気になったり
星花もちょっと考えて
でも給食着じゃあ
あんまり頼もしい星花って感じじゃないな、
ちょっと思い直して。
小雨お姉ちゃんや麗ちゃんみたいに、
お気に入りのエプロンで背筋を伸ばすのだってりりしいけど
春風お姉ちゃんと蛍お姉ちゃんは
かわいいエプロンも
着慣れた感じは
きりりと大人っぽい。
やっぱり服装で
気分も変わるのかな。
ちょっとめずらしい
星花たちだけが
学校給食みたいな気分の夜。
きのうの試合の続きみたいな気分で
お兄ちゃんも誘って、ボールをなげっこして追い掛け回していたら
日が暮れると
知らないうちに、すっかり寒くなっているの。
いつのまに!?
星花が気がつかないうちに
冬が押し寄せていた!
昼間に干したエプロンも生乾き。
今日はわりとお天気だったのにな。
すぐ必要になるものは
なるべく日当たりのいいところに別にして干して置いたらいいのかな。
必要になるものは
他にいっぱいあるから
しょうがないかな?
まだ小さい子だから
小さい子なりの失敗で
着替えた、子供っぽい星花たち。
せめて少しだけ
明日には、と誓って
寒い日に早めに休む星花が
今夜はいい子ですくすく育ったら
明日はもう少し
よく気がつく
大人っぽいお姉さんになっていますように。