『ごろごろ』
どうかと思うの。
冬の休日は
あたたかくして
家の中でごろごろ。
そればっかりでは
ちょっと……
まあ、わかるけど。
厳しい寒さは知っているけど。
もう日が沈むのも早くて
気がついたら冷たい風に囲まれている感覚が
とてもきついのは
言うまでもないんだけど。
子供は風の子なんて
都合のいい決まり文句を
どちらかというと、ふだんは
うっとおしく思っていても
でも寒さに負けて
ひとりひとりがその手にみかんをにぎりしめて
こたつの場所を取り合うおしくらまんじゅうに
息を弾ませているのを見ると
なんだろう。
冬なのに
暑苦しいっていうか。
体感温度があがっている感じはしないけど
なんかね。
つい先日までスポーツ流行りだったのに
反動かしら。
寒さを感じはじめたら急に
こもり出したのは。
中間に相当する位置が何もなく
激しい運動量の地獄から
みっともなく汗ばんだ肌をくっつけあう
ぬくぬく天国……なのかな。
見た目はあまり美しい光景ではないわね。
微笑ましい気は、少しだけする。
全面的にこの状況を支持するには至らないくらいわずかに。
ヒカル姉様を奪い合う遊びをして
試合に参加しない小雨ちゃんや吹雪ちゃん、ユキちゃんたちと
あったかい飲み物を用意して帰りを待ちながら
こんなに寒い日が続くのに
体を壊さないといいけど、
やっぱりおうちには元気な子が多いね、
とみんなで話し合っていたら
ただ単純に
このところ急速に増して着た冬の寒さに
気がついていないだけだったのね。
元気というより
なんだろう。
鈍いってこと?
元気ではあるのかな。
恐竜みたいな方向にね。
寒さで絶滅する恐れがありそうね……
脳の容量が体格の割りに小さい子たちが。
といっても、脳の大きさは知能に関係しないらしいけど
本当かしら?
寒さを避けてこたつを奪い合うのは
生存本能というわけね。
どうにかして立夏ちゃんたちが人間並みの知能に進化するといいわね。
なるべく早く。
種族が進化するほどの時間をかけずに。
それを考えたら
人間なんて、たいして進化した生物ではないような気がするけどね。
本能で生きている人も多いようだし。
春風姉様も……
まあいいわ。
なるべく早く
北風の押し寄せる速さに負けないように急ぎたい
わがやの冬支度の快速が
こたつの誘惑に遮られるだけじゃなく
きゅんきゅんと謎のブレーキ音を立てて止まりがちでも
今日は休日。
時間をかけたらどうにか、
まったく進まなかったというわけではないんだし。
ようやく乾いた星花ちゃんたちのエプロンをそろえて
春風姉様たちのお手本も並べて
これからのために予備を作っておく裁縫教室は
基礎の段階だけなら進んだことは
良かったと思う。
でも男の人サイズのお手本は必要なかったわ。
結局、私以外はみんな
大きめサイズに作ってしまったし。
自分の分じゃなかったのかしら。
一人分だけ服が充実していても
この寸法じゃあ使いまわせないじゃない。
どうするのよ。
ひとつ仕上げて満足した子から順に
休憩。
こたつで。
ああ……
避けようのない本格的な冬が来る前に
厳しい季節を乗り切る準備は整うと思う?
そのあと、希望者を募って行われた
料理教室も
そろそろケーキの季節です、
好きな人と過ごすロマンティックなクリスマスは近い、
なんて盛り上がってしまう。
それはまあ……
誰のことを考えて作るかは意見が分かれるとしても
作れたほうがいいのは確かだわ。
今のところ、大きなお菓子つくりは
身につけている人が少ない技能だし。
需要の割りに。
でも、
やっぱりこのあとぬくぬくするんでしょ?
大丈夫なのかな、
悩んだり。
そのあたりを口に出すべきか迷ったり。
まあ今日のところはね。
きのうまでは湿布の気配も漂っていた台所に
いい香りがいっぱいになったら、それは歓迎だものね。
蛍姉様もみんなも、変わらぬ元気ではしゃいでいたし。
ここしばらく無茶をして疲れたから
こたつで休憩、と言うわけでもなかったのね。
だから別に、運動したがっていた子たちの仲間に参加しなかった少ない人数が
今は力が残ってるからと思って
張り切る必要もなかったわ。
いえ、私は張り切っていないけど。
ただ単に、男の人用のエプロンだけが余っても意味がないから
私が自分に合わせて作った分は星花ちゃんたちに譲ってあげるというだけのこと。
ケーキ作りだって、特に私がすることは何もなかった。
寒くなっても
普段どおりの一日でした。
だから、今日の調子で
このまま暑苦しいこたつ周辺までが日常になったら嫌だから
そのことだけに文句を言いたいの。
家にいる子の元気が余ってるなら
私は気にしないで出かけていっても良かったのね。
これから冬を越す期間の参考にします。
春風姉様をはじめ、家事ができる人たちが
まず冬支度を手伝いたい相手が偏っているのは
少し気にしておいたほうがいいということだけは
今日一日でわかったから
私がいつもすることには関係ないとしても
まあ一応、
覚えておくけれど。