『永劫の』
夜は長く
ねっとりと這いずる闇に浸され
沈黙に似た金切り声を響かせる黒鳥と変わりない冷気が
星たちの輝きから降りる頃、
指先までを噛み切るような寒さに震えながら
氷の園に広げる小さな慰めは
いにしえの堆積したほこりの内から凍りついたインクで届けられる
甘い香気に満ちた
未知が投げる陰影の下、
それは深く音のない海の底や
人間の知性がまだ接近を許さない宇宙に満ちる
深い暗黒の物語、
なのではないか。
影が落ちた風景に
目を凝らして
見慣れた形を探す試みが
光の加減で移り変わり歪む視界が
時に物質そのものであるように見えて
闇は無情に扉を閉ざし
また天球の移り変わりによって隙間から光を放って
私たちを招いている。
簡単な道ではないと歌う
楽器の音に混じる乙女の声は
おそらく翼を広げ
優雅に舞い踊る妖異のからかい。
まだ先が見えない暗がりの先に
求め続ける理想の叶う国と
語る言葉も今はまだない未知の景色が広がっていると
風に乗せて空耳のように伝える高い音は
人の想像力ではまだ届かない
せいぜい深海にある常識で計れない不思議を
我々の知る肉の構造と組み合わせてみる以外に
表現する手段のない者たちの侵食。
誰も知らない場所に何があるのか
私たちをそこへ運んでいく足取りは
こわごわ踏み出す一歩はいつも
目を閉じたままと同じ深淵を貫いて進む
一筋の頼りない光のような
胸に灯った小さな好奇心のほかに何もないというのに
積み上げたロマンの山は
いつも部屋の一角を塞いで
上着の袖に付いた暗雲のようなミートソースのあとが
私の部屋の状況を白日の光のもとに明らかにすると
情け容赦ない現実的なビニール紐の一歩が
春風たち家事担当の手によってもたらされ
ついにこの私に
無慈悲な部屋掃除を要求する。
そう……
確かにこのままでは
急に寒さを増していく季節に
秋服のままでは対応できないから
ここはひとつ、
姉の役に立つことを心からの喜びと感じる
運命的な弟と言う立場に生まれた愛しい者の
好奇心を刺激する暗黒大陸のごとく発見に満ちた世界である
果てしなく驚異を産み落とす
とても見た目程度の空間とは思えないあまりに深い真の姿を奥底に隠し持つ
タンスの奥から
いくつか暖を取る目的で借りて行ったならば
そこに必然的に生まれる暖かな交流の喜びに
きっとオマエの毎日も光り輝く木漏れ日の小道を行く優しい景色になるだろうと
信じて疑わなかったというのに
その美しい景色に至る道は
なぜだろうか、
声と表情は花がほころぶ愛らしさに満ちた春風の
ずるいからだめです、
の一言で重く閉ざされ、
私はついに
深い喜びに満ちた探求の日々を
自らの手で紐に封じ、
物置に送り込まなければならない。
秋の夜長を共にしてくれた友を
きっと私は忘れない。
しかし、謎とロマンに満ちた
果てしない探求の地ならば
私のすぐ隣でいつも
目をきらきらさせてその中身を膨らませ続け
決して退屈のない冒険を
約束してくれる。
いつまでも終わりない旅をする地は
これから訪れる冬も変わりなく。
寒さに鼻をたらしていると
それは氷穴をふさぐ面倒な障害物になりそうだから
体調には気をつけたほうがいいと思う。
そのほうが、私もからかいやすいのだから。
優しい姉の心配を
お前も覚えておくといいだろう。