春風

『ゴーゴー春の予感』
甘い香りがどこからか
ふんわりと漂い
光の中で見回すと
見上げる枝に小さなつぼみ。
さくらちゃんが教えてくれた少し前より
ふくらんできている──
丸く縮こまったまま
力をたくわえるつぼみは
もう少しだと待っている。
まさか花が開いてもいないのに
いい匂いがしてくるわけでもないと思うけど。
今日はまた寒さが戻ってきて
震えている子たちも駆け回って
押し入れに運び入れた冬物をまた取り出し
家の中は大さわぎ。
元気いっぱいの子供たちも
冬の寒さは沁みてしまう。
くしゃみばっかりしていたら
叱られてしまうし──
甘くて暖かいミルクも早い者勝ちで
すぐなくなってしまう──
もう間もなく見ることがなかなかなくなっていく
ぽかぽかになりたがっている冬の景色。
来年までしばらくはおあずけですね。
でもよかった。
今年の冬に編んであげたセーターや手袋を
どうやら気に入って使ってくれているみたい。
作っている間はいいけれど
渡す時になると──
気に入ってくれるか心配になってしまうという
春風の不思議な心の中を
私の王子様には見抜かれていたかしら──
よく優しい視線を感じるのは
そのせいでしょうか──
春風がまだ小さいころ
編み物もお料理もお掃除さえ何にも知らなかったころ、
忙しかったママが作ってくれる手袋は
そんなに凝ったものじゃなかったけれど
暖かくて──そのおかげで春風が苦手な冬を乗り越えてきたという。
あのときのママの贈り物がなければ
寒さに凍えてしまい
今こうして王子様と会えなかったかもしれないなんて!
あんなふうにみんなを温めてあげられるか
いつも不安になることばっかりだけど──
明るくてかわいい妹たちを放っておけないですものね。
これからもう少し続く寒さと
その先の楽しい季節によく似合う服を、
考えてあげたいですね。
喜んでくれるといいんだけど──
明日はひな祭り。
すくすく素直に育っている家族に
春風がしてあげられることがあるといいな──
あなたは食べたいものや
春風へのリクエストは
何かあるかしら。
あなたのためなら──なにもかも叶えてあげたい。
家族の弾けるような笑顔を助けていられる
春風であればいいといつも思っています。