春風

『その夜』
2月14日。
ずっと待っていたバレンタインデーの日も
過ぎて行き──
静かな夜を迎えました。
みんながチョコをあげたくて
どうにか用意もできて、
大さわぎをして
はしゃぎながら
何とか受け取ってもらえたと
春風は聞いています。
いつも私たちの中心にいる
素敵な王子様へ
思いを伝えたい心からの願いが
どうにか叶ったの。
よかった。
本当にうれしいことだと思います!
ときどきチョコをあげるより
自分で食べるほうが好きだったり
作るのに夢中でつい山盛りになったりも
しているけれど──
誰かのことを考えて
この日を迎えられるのが
うれしいの。
贈りたい相手がいること、
思いを伝えられたらと願う人がいること。
それがそれだけ幸せで
大事に思えることなのか
もしかしたら私たちの王子様には
全部伝えきれていないのではないかしら──
それとも、本当は
わかってくれているのかな──?
お休みの前に大変だった一日に
ほっと一息の
コーヒーを少しだけいかがですか。
眠れなくなるほどではない
少しだけ──
そう伝えたなら
もう少し一緒にいたいという言い訳だと
やっぱり見抜かれてしまうのでしょうか。
みんなが愛している
私の──
いちばんの気持ちを捧げたい王子様。
夜の短いひと時だけでも
願いを叶えてもらえたらなと祈っている、
そんな気持ちも
やっぱり見抜かれているのかしら。
でも──お疲れの王子様をいたわりたいのも
本当のことです。
王子様、今日は甘いものをずいぶんもらったから
お休みのコーヒーに、砂糖とミルクは少なめがいいですか?
もし、春風と同じ気持ちでいてくれて──
甘い時間をもう少し過ごしたいと言ってくれるなら
今夜だけはとろけるような魅惑の甘さを
二人でいただくのも
いいんじゃないかなと思います。
一年に一度でもこんなふうにして
寒さに身を寄せ合う夜を、あなたの近くにいられるなら
それが春風の人生のすべてでもかまわない──
なんて。
明日になってもこれからも
二人は一緒だと──
ついどさくさまぎれに春風は本日誓ったつもりなのにね!
そうだ、王子様。
朝ごはんのお話をしてもかまいませんか?
明日は何を用意したらいいのか聞きたいな──