春風

『おふろ』
たのしいおふろ
みんなでおふろ
おうじさまとおふろ
うれしいなっ♪
ふふ。
小さい子がいっしょうけんめい作ったかわいいお歌
というわけではなくて
たったいま春風が作った
心の中から浮かんできた歌。
このごろ雨模様の日が続いて
お外で遊べないちびっこたちの元気がありあまっているの。
私たちの王子様だって用事があるかもしれないのに
いっつもおねだりして
困らせてばっかりいないかしら。
本当は、王子様を困らせたいのは春風なのに……
なかなかそういうわけにもいきませんもの。
二人きりのときだけですよね。
いつでも遊んであげるやさしい王子様。
みんなのすてきなお兄ちゃん。
いいことなんだけど……
もちろん、いいことなんだけど……
ふと一日のどこかで立ち止まり
そろそろお休みもいいかしら?
だって会いたくなってしまったんだから!
さがすとき。
あなたはいつもやさしくて
私だけがお嫁さんではないということに気がついてしまうの。
しゅーん。
それはかわいいさくらちゃんからお願いされたら
結婚の約束は断れませんよね!
春風もさくらちゃんとは何度も約束したもの。
わかります。
愛するあなたを遠くから見るとき
暑くなる胸の温度のせいで涙がこぼれるのはなぜかしら。
小さい子だったら決して
こんなつらい気持ちなんて知らないわ。
春風もかつては小さい子だったのに
いつからこんなに怖がりになってしまったの?
あ、でも春風も
昔からずいぶん怖がりで臆病で
今日みたいにちょっと雷が鳴り出すと
ぶるぶる涙をこらえていたと聞きました。
なーんだ!
あんまり変わっていないんだ!
じゃあ何も複雑なことは考えないで
心置きなく気持ちを伝えてもぜんぜんかまわないのね。
知らなかった──
もうお姉さんなのに
べつに、なんにも変わっていなかったのね。
好きということを伝えるときって。
気がついてしまった春風だから
恥ずかしいなんて思ったりしないで、
いえ、やっぱりちょっと恥ずかしがりながら
うきうきする気持ちを抑えたりしないで
たまには子供の頃に帰ったというか
まだぜんぜん子供だし、ということで
楽しいお風呂の歌を作ってみてもいいし
困らせるかもしれないなんて遠慮せず
一緒にいてねって伝えてもいいのです。
氷柱ちゃんがびっくりしてもかまわないの。
ここは私たちが
いつもお互いを思い、愛し合っていくと決めた場所。
永遠に変わらぬ気持ち。
だからいいの。
どうか王子様もときめいて。
春風のために
ときどき歌いだしたりしてみてください。
だって春風のほうだけが気持ちを丸裸にしたら
たまに恥ずかしいときだってあるじゃないですか。