『スイートホーム』
初めて出会った日、
胸がときめいて
心の扉は大きく音を立てて開いていました。
あのときには
大きな嵐に揺れる心地で
このままどうにかなってしまうのかと思ったけれど
意外となるようになるものなのか
とりあえず今を迎えることができています。
もしかしたら
今のようではなく
もっと思い切った選択をした先に
別の未来も用意されていたのかもしれない。
でもそれでは
かわいい虹子ちゃんと
こうして遊び相手になってあげられずに
王子様がみんなのものではなく
私だけのためにいてくれるようになると
きっと寂しい思いをさせてしまうことになっていたの。
そう考えると
迷ったり落ち込んだりたまに勇気を出してたどりついた今も
悪いものではないような気がするの──
むかし
全ての悩み事はコーヒーたった一杯で解決すると言ったのは
誰だったのでしょう。
答えは最初から自分の中で出ていることがほとんどなのだから
実行するまでに
決意を固める時間だけが必要なんだと。
でも、春風が落ち着くと
コーヒーに注いだ甘い砂糖とミルクは
よく私の決意を溶かしてしまって
こんな甘い日々が続けばいいという願いに変えてしまう
ひどい術をかけてしまうの。
あ、そういえば
思い出しました。
甘いと言えば!
新しい年を迎えるとき
気持ちの上で大事な年末年始の行事を無事に済ませて
ほっと落ち着いた感もあるこのごろ、
さては
次の大きなイベントに向けて
一歩一歩準備を進める
そんな時期が来たのではないかしら?
友達といった本屋さんで見かけた
お菓子の特集。
今年も友チョコを送り合おうねって軽い気持ちで話したときは
話題はそれっきりだったのに
ふと別の瞬間
あなたと歩いて
その時、目に入った景色が
友達と見たのとは同じだと思えないくらいに
春風のことを
きゅーんと
天国へ運び
甘い夢の国へ誘い
今年もきっと
運命の時はやって来る!
確信はひらめく流星のように訪れたのです。
私はまた
誰も止めることもできず
落ち着く手立てがこの世界にひとつも存在しない
あの日をまた迎え、
本気になってしまうのでしょうか。
王子様は
いまどき好きなチョコレートや
女の子のタイプなんていうものは
あるのかしら?
なかったら
春風の色に染めるチャンスだということかしら。
長いのか
短いのかもわからないのが
一ヶ月。
がんばって寒い時期を乗り越えようとしているうちに
きっとやって来る日があるんです。
2月14日は
今から私だけのために予定を空けておいてくれなくては
どうなってしまうのか
それはこれから胸が弾みをつけてとびあがる春風にも
まだちっともわからないのですから。