春風

『今日も』
はいっ!
今日もお兄ちゃんが待ちに待っていた
かわいい愛くるしい
はしゃいでじゃれついてとまらない
こいぬ系妹の夕凪ですよ!
お兄ちゃんの姿を遠くから見たら
どこからだって。
お兄ちゃんの気配が鼻をひくひくさせたら
何をおいても駆け出していって
ああ、
お兄ちゃんを
世界中の誰よりも
強く強く
愛しています!
王子様!
って、なってしまう
夕凪です。
なんちゃって。
言葉にして伝えるより
もっと得意な方法で
王子様に愛を伝えることができる夕凪ちゃんは、
結局、いつもより少し甘えながら。
どんなことがあったって、お願いをきいてくれて
何があっても味方になってくれるお兄ちゃんに
転がるみたいにして甘えながら
誘惑の小さなキャンディのようなかわいいわがままをありったけ届けたなら
もうそれだけで
毎日夕凪は日記を書くの、なんて頬を興奮の色に染めて主張していたなんて
すっかり忘れたみたいに
もう今頃はいつもと同じすてきな夢の中。
春風たちも元気に過ごした子供サイズの小さなベッドの中で
また、目が覚めたときにいつもいてくれる人を思いながら。
王子様にそっと守ってもらえる優しい一日を送っているのだと思います。
お兄ちゃんがいてくれる毎日って
とっても楽しそうなの。
どんなものなんだろう?
膝の上でうれしく眠りに落ちることを許してもらえる瞬間まで
体じゅう全力で気持ちを伝えてもいい人がいるなんて。
もしも春風の王子様が
こんなふうに夕凪ちゃんくらいの子供のときから甘えさせてくれる
やさしいお兄ちゃんだったなら
どうしていたかしら?
きっと春風は
もっと甘えて
いつまでも甘えて
甘えて甘えて
甘えに甘えまくって
私たちのこの星のどこにもかつていたことがない
はじめての規模の
誰も止められない甘えんぼうになって
夕凪ちゃんもあきれてしまうくらい
ぴったり寄り添って
仲のいいふたりが同じひとつになってしまうまで
その時が来ることを疑うことも知らずに
いつもあなただけを見つめて
離れたりしないで
それだけでうれしくて生きていられる
新しいタイプの生き物になってしまうんです。
今とそんなに変わらないですね!
それとも
今よりもう少しだけ、
どんな世間の常識も止められないまま
愛を貫き通す女の子。
やっぱり、今と変わらないかな。
夕凪ちゃんが、あなたに伝えたいことがいっぱいあると
春風は見ていてよくわかります。
楽しかった出来事を伝えて
喜んでもらえたら幸せが大きくふくらむ。
そんな相手が毎日すぐ近くにいてくれるときの気持ちを
春風はもう知っています。
もしも、何もかもうまくいくばかりじゃなくて
つまずいてしまうことがあっても
その時の気持ち、
すぐに立ち上がって走り出せた日も
照れくさくて知らないふりでそっぽを向いたり
うつむいて目を閉じる時間を少しだけ与えてほしい落ち込む日、
いてほしい人を探して、涙に気づかないまま曇った世界を探すこともあるし、
すぐにやって来てくれるとなぜか根拠もなく信じていられて
もうすぐ届くはずの場所に手を伸ばすときだって
春風の大事な家族がみんなそうしているのを見つけても
心の中をよぎっていく真剣な思いを聞いてほしくなることもあるんだろうな、
それを全部、自分のことみたいに一緒に喜んだり悲しんだりしてくれる人が
この世界にいると教えてくれる経験を
これからみんなが重ねていくんだと思ったら
王子様はきっと春風をいちばん気にしてくれるんだもん、
きっとそうなる!
春風の限りない止まらない愛で
これから毎日そうしてみせる!
と思うから。
春風がなんとなくだけど、言葉にしてみた
本当はもっとまとまらないいろんな
ぐつぐつかきまわすおなべの中みたいにぐるぐるしてる
あなたに届けたいときの気持ちは
もしかしたら、ふだんから知恵があるほうではない春風の考えは
これからどんどん変わっていくかもしれないけれど。
これからもあなたに聞いてほしいことが毎日たくさんある、
春風も夕凪ちゃんも
ずっと変わらず、そうなんです。
そうだ、もうすぐ魔法の力で姿が変わってしまうハロウィンがやって来ますね。
って、こんな言い方をしたら
蛍ちゃんと、これだと子供たちのトリックオアトリートがどこかにいっちゃうね、なんて
魔法を込める布地を手に二人で少し首を傾げてから
まあいいかと同じタイミングでうなずいたときのことを思い出してしまって
一瞬、本当にいいかなあとまた悩むけれど
春風も蛍ちゃんも、そんなにいろいろできるわけじゃないから
小さな何気ない挑戦からはじめて
だんだん、あなたといる幸せに近づいていくの。
だから今年は
作っている人もよくわからない魔法がかかる変身ハロウィン。
春風は今年のその日、
一日だけでもどんなものにでもなれるなら
王子様のかわいい妹に
魔法の杖を振って一瞬で変わります!
絶対なります。
あなたの愛する春風は
たった一日、
あなたの愛する妹の春風に!
楽しみにしていてくださいね。
突進してくるこいぬに
どんな遊びをしてごろごろ甘えさせてあげるのか
今から考えておいたほうがいいかもしれません。
ふたりだけの秘密にしてしまいたくなるような
特別な魔法の時間を過ごしましょうね。