『堕天』
聞こえてくる祭囃子と
あれはおそらく
子供たちのにぎやかな声──
夏休みも半ばを過ぎた。
オリンピックも閉会式で一区切り。
フェスはごはん派が意地を見せ、
まるで夜明けに見る夢のような
お祭りの日々はだんだんと通り過ぎていく。
明るくなっていく暁に
ひときわ輝く星が最後まで抵抗をつづけるみたいに
夏休みの太鼓と笛の音に引き止められている子供たちも
さすがにそろそろ
宿題を片付けておかないといけないことは
気が付き始めているようだ──
そんな中で、そろそろ
日常生活に戻り始めた我が家にも
うわさに聞こえてくる
お祭りや花火大会のお知らせ──
暗い闇の中で
小さな光が灯るように、
全てが塵に帰る宇宙で
ひとときの生命が誕生するように──
終わりが見えてきた
あとは短いのかまだ長いのかもわからない
この暑い季節のお休みに、
足を延ばせば届くくらいの
どこかのお祭りの話は
ずいぶんまぶしいものとなる、
そういう子もいるようだ。
行ってみるのも
悪くはないのだろう──
提灯の明かり、
屋台の香りと
心を動かす歌と踊りに
やがて終わることを知らぬように
夏を楽しむのも──
永遠に触れることもなく
刹那の時を生きる宿命の
人間たちにとっては──
穏やかで変わらない日常と同じく
切り離すことのできない
営みの一部なのだろう──
その衝動を誰が止めることができようか。
たとえ宿題が後回しになっても、
遊びに夢中で部屋が散らかっていても
夜は人を誘惑し
包まれる闇に明かりは揺れて──
静けさに耳を澄ませるとき
歌が聞こえてくるのも
私たちの住むこの世界ではそう珍しいことではない。
今日も星明りは輝く──
あの光を求める人を導くように、ひときわまぶしく──
夏の夜は、ときどきそういうこともあるのだ。