『まさかの』
今日もテレビの前はにぎやかだ。
世界の強豪を相手に食らいついて
奇跡の逆転劇をつかみとる話も
健闘の末に敗れても
戦い抜く姿が人々の記憶に残る話も──
見れば見るほど面白いそうだ。
全てが新しく
底がわからず
自分の中にあるものを見つけ──
あるいは遠い理想に重なる姿を
知るそうだ。
いつか遠い先に滅びる人間たち、
そのひとときの──
やがて何もかも消えていくさだめのもの。
挑戦をやめないで──あきらめないで、
駆けていくことにそれほど人の心を動かす何かがあるのだろうか?
人の身よりもわずかに長く形をとどめる
金や銀を手にしようとあがく
いつかは消えゆくもの──
その不思議に答えを出すという理由で
私たちは心を惹かれるのか──
そして、オリンピックがわがやにもたらした
まさかの事態と言えば、
放送時間の関係で夜更かしをしても
あまりうるさく言われないということだ。
長い夏の夜をなんとかして比較的健全に見せながら
過ごす方法がこうして見つかるとは
四年に一度の祭典というのも──たまには気にかけてみるものだ。
あの選手たちの真剣な顔。
怖がりながらも──それでも前に進むと決めて
運命に立ち向かう表情を
私はどこかで見たことがないか。
愛する家族たちにときどき見かけたことはないか──
そんな疑問をときどき思うから、
答えを出すために見ているというのも
そんなに全てが嘘とは言えない。
夜の過ごし方を──愛しい闇の過ごし方を
少し快適になった気温の中で生きるということを
どんな方法でも良いからと──私は見つけようとしている。
今日もヒカルたちに付き合って、そしてほどほどのところで
無理をしないように見守って夜を過ごす。
夜更かしはいつも楽しいものだ──
家族とならなおさらだ。