『夢を見た』
雨の後で涼しくなり
よく遊んだ子供たちが
泥だらけで帰って来て──
まだ明るいというのに
お風呂できれいになった子たちは
少し遅いお昼寝の時間じゃ。
わらわも、タオルケットをかけて
もうすぐ夢に落ちる──
そんな予感がする。
夏場のお昼寝はいつでも楽しいものじゃ。
起きた時にのどが渇くのだけ困るので──
先に冷蔵庫を見ておいたほうが良かったかもしれぬ。
麦茶があるか──牛乳入りのアイスココアは作れるか
目覚めてからのお楽しみじゃ。
夢に落ちて──
あるいは長い旅をして、
月明かりの下で杖をついて
お土産話を届けるために帰ってきたあと。
または、大きく育って
運動も今よりできるようになって、
兄じゃのお手伝いもお手の物になり
ときどきは、子供の頃なんかより
遠くを目指したり長い間一緒にいてほしかったり
とてもあのかわいらしい観月とは思えぬわがままを言うようになった
すらりとしなやかな妹が──
夢のようなと言っていいはずの望みをかなえる前に
こればっかりは夢でも見せることはかなわぬ、
大きくなってその時を待つようにと言わんばかりに
すうっと──子供の体に戻って来る
その時が来るころに。
もしかすると、今はまだその存在を知らず
夢のまどろみでしか触れることができぬような
見ることかなわず──
伝えることも許さず、
現世に住まうことのないものたちと
遊びたわむれ、たまには狙われ追われ
戻ったときに覚えていてはならぬと禁じられ──
そんな出会いの後に
目を覚まし、兄じゃの迎えがあって
家族のもとへと帰って来る──
そのようなこともあるかも知れぬ。
重いまぶたの
落ちるままに任せると──
子供はすぐに夢の世界へ落ちてしまう。
夏が来て
まどろむ短い時間がまたやって来る──
今日も観月は、人の知らぬ体験をしているのかもしれぬぞ。