星花

『たずねびと』
夕凪ちゃん!
……
こっちじゃないかも
しれないな──
あっちかも──
うーん、でもな──
夕凪ちゃーん!
星花が
待ってるよ!
宿題の約束が
まだだよーっ!
星花はいつも思うのだけど
宿題を済ませたあとのおやつは
うーんと
おいしい!
でも、夕凪ちゃんが言うには
お姉ちゃんたちが一生懸命用意したおやつ!
甘いおやつも
からいのも──
宿題に関係なく
いつ食べても
おいしいに決まっている!
ということで
さっきまでテーブルにまっしぐら
だったのは見ていたけれど──
それから一緒にいた青空ちゃんの話では
おいしい
おいしいって
ほっぺたが落ちないようにおさえて
よろこんだ!
そのあと──
こんなにおいしいのは
ヒミツがあるに違いない!
いつか誰かがまだ知られていない
ヒミツを解き明かすに決まっている!
歴史的なその瞬間に──
夕凪がすぐそばで見ていられないなんて
そんな悲しいことになったら
間違いなくじっとしていられない!
って、ばねみたいに椅子からとんでいって
キッチンへお手伝いに行ったとか。
大根をむいて
ごぼうをむいて
にんじんだって皮をすいすい
野菜は残らずするするり。
さといももこんにゃくも油揚げも
ひとくちサイズに切る大変なお仕事を成し遂げたあと
どこかへ飛び出したんだって。
きっと疲れて休んでいるんじゃないかと
お姉ちゃんたちは言うけれど
お部屋にいないし──
夕凪ちゃんならまだもうちょっと
元気が残っているんじゃないかというのが
星花の予想なんですが
これで晩ごはんの具だくさんあったかけんちん汁であったまったら
すぐ眠くなっちゃうのでは、
手をつないで部屋まで運んだら一緒にあったまって
星花も眠くなっているのではと
勘と経験がささやいている
ありえそうな予測──
なんとしてもその前に
夕凪ちゃんに──
うまく笛を吹くコツを
教えてもらっておかないと
また夕凪ちゃんの上手な笛のあとを
ちびっこたちが歌いながらついていっちゃうよ!
おまけに明日の金曜日を過ぎたら
休日がやってきて
ますます激しく移動する夕凪ちゃんを捕まえられなくなっちゃう!
なんとかして
見つけ出さないと──
お休みの日が来てなにもかも予想できないことだらけに
なってしまうその前に
星花は宿題の笛が上手くなりたいと
そわそわしてばっかり
いるんです!