海晴

『ありがとうの気持ち』
今日はホワイトデー。
キミのセンスが試されるね!
なんちゃって。
本当は、特別な人が
自分のことを考えて選んでくれた贈り物。
もうお菓子だらけでたいへんーだとか
下僕にしてはまあまあねーだとか
なかなか素直に本心を言葉に出来なくても
あのうるさいみんなの
いつも以上のわいわいうるさい大騒ぎ!
いつまでも止まなくて
ずっとずっと終わるような気がしないにぎやかさで。
本当はどれだけ喜んでいることか。
わかりやすいんだから
照れてしまっても隠そうなんてもうあきらめたらいいのに。
伝えようとする気持ちが
言葉にならないなんて経験が
どれほどぜいたくで得がたいことなのか
ちゃんと一度は自分で認めておかないと
とてももったいないんだから。
飛び跳ねて喜ぶだけじゃなく
こんなにもうれしいともっとわかってほしくて。
ありがとうって言葉でも
今度だけはなぜか足りない気がして──
向かい合っても何も言えなくなる。
うれしいから。
それを真剣に伝えたいから
一生に一度かもしれないって
そんな気持ちまでしているから
わかってほしくて
つらくなる。
決して成功するはずがないとわかっている試み。
だけど
それでも
世界の誰も形にしたことがない
この気持ちを
どうしてもわかってほしいともどかしく思う
私だけの──
どこにもないたったひとつの幸せ。
ちゃんと悩んで
挑戦できなかったら
きっと大事に思い出したときに
ほんのちょっと後悔するんだから。
実感して
それでちょっと──
伝えきれない残念さをかみ締めなくっちゃ。
ホワイトデーの贈り物にもらえた
マシュマロ
キャンディー
カロン
カステラ
ドーナツ
プリン
ロールケーキ
ビスケット。
華やかないろいろ。
今日はどうもありがとう。
みんなもとっても喜んでる。
ずるいな。
こんなにすぐ
私たちを笑顔にしているなんて
男の子はやっぱりずるい。
だって
私は
もちろん、きのうまでずっと
少しの期待をして
まあ、少しくらい不器用なお返しだったとしても
そこはかわいい弟だから許してあげようとか
そんなふうに考えるだけで
すっかり上機嫌だったのが
今日になったら
そう、すまし顔をして
さりげないつもりで迎えた今日には
伝えたいことがあふれ出して
困っているんだもの。
少し食べ過ぎちゃったかな。
せっかくだからと
お姉ちゃんも食べたいなーって冗談っぽく言いながら
策略をめぐらせていたっけ。
ふふ──
伝えたいことの半分くらいは
今、形に出来ているのかな。
後になってもっとって思うのかしら?
甘い匂いに包まれて
おなかがいっぱいだから
とってもうれしい気持ちだったり
それだけじゃないわよね。
きっと、たぶんね。
あっ。
でも、明日は
ミント味が妙にたくさん手元にあったりしたら
おねだりしてひとつもらっちゃおうかな。
あっても困らないものだと思うし
またこの家の
いつかこの場所で
必要な機会に恵まれるかもしれないからね!
もしかしたら明日なのか
次は来年?
うーん、実際にその時が来たら
どんなエスコートをしてもらえるんだろう?
期待をして待ってるね!
その時、私は少し成長して
キミのために
必ず今よりも上手に気持ちを伝えられるようになっていると
約束します。