星花

『北風と』
寒い日が続いています。
灰色の曇り空と、吹き付ける風。
もうすっかり暖かくなりそうな気がしていたのもあって
みんなは寒さにおどろき
すぐ家の中に戻っていく毎日。
こたつにもぐり
ほっこりして
そのまま宿題を広げたり
腰を落ち着ける場合が多いみたいなのですが
これでいいのでしょうか?
少し前までは寒さに負けないでいようねって
休まずに走っていられる距離を競っていた仲間が
のんびりしていれば近いうちに春が来るような気分で、
というか実際に寒い時期はもうあとわずかなのかもしれませんけど
残りの時間を惜しむようにコタツの中。
でもこれでは……
お外で遊んで鍛えないと
すぐ体がなまってしまいそうな気がします!
こたつの上にあった大人気のみかんも
ついに今日でおしまいになり
見合わせる顔に浮かぶ心細さ。
のどがかわいたとき、
こばらがすいたとき、
手持ち無沙汰なとき……
もう頼れるみかんはない。
それを思うと
こたつから卒業する日は
思いがけなく早く訪れたのだと
知らされるような
言葉も少ないその瞬間に。
霙お姉ちゃんはみんなの意見を汲み取って
少なくとも
心細いことだけはないようにと。
たぶんそんなようすで
まだ未開封の知らないボードゲームをどこからか取り出してきたのです!
災い転じて福と成すといえます。
ああ!
たちまちみんなに似合う笑顔は戻ったけれど
もう少しお外にいたかった星花の願いが
叶えられる日は少し遠のいたような!
こんな時には
有名な故事に習って
力でコートを吹き飛ばすよりも
全身ぽかぽか暖かくなれば
寒さなんて気にならなくなるのではないでしょうか?
それでコーヒーと
小さい子にミルクを運んであげたの。
おいしくなるように
まだぜんぜん上手じゃなくて
手間をかけるのはちょっと苦手でも
なるべく丁寧だといいかなって
心を込めようと思ったコーヒー。
結局どうなったかというと
人気のコーヒーを目当てに
みんなが移動したキッチンで
おかわりと、
たくさん入る大きめカップのくらべっこと
そのまま早めに晩ごはんのお手伝いをはじめたんだけど
インスタントなのに良かったんでしょうか?
そもそも星花の狙いはあまりうまくいかなかったみたい。
頭を使ってみるよりまず
星花は寒くてもお外がいいなって
お兄ちゃんの手をぐいぐい引っ張る北風作戦を
試してもよかったかもしれないですね。
みんなのコートを吹き飛ばそうとする北風が
あとどれだけ続くのかわからないけれど
星花はもう少し
平気な顔をしながら
ただ夢中になってばかりで
何も気にしないでちょろちょろ動き回っていたいんです。
子供は風の子!
明日も子供っぽいままでも
たまたま楽しいことばっかりで
寒さを怖がらないで走っていけたらいいですね。