小雨

『シーズン間近』
のどかな日差しと
落ち着いた気分で
空いた時間の隙間には
一冊読み終えたら
次の一冊。
また一冊。
止められないというのも違うけど
つい次々と手が伸びている。
忙しくばたばたすることもないとき
退屈そうにしているだれかがいたら
小雨には面白かった本のお話しかできないのかな──
紹介してあげられるとしたらそれはいいことかも?
でも余計なお世話かもしれないから……
知っての通り小雨は
とてもみんなの真ん中にいられるはずはなく
いつも横から
ちょっと離れたところから
引っ込み思案なために見た目より距離を置いているような気もしながら
お助けできたらなと
考えているようなところがある子は
一人でいたらどうなってしまうのでしょう?
臆病者の小雨でも
孤独を愛するのでも一人に強いわけでもないので
まるで引っ張ってくれる人がいないとしたら
けっこうだらしなくなるのかもしれませんね。
みんなで集まって
そんな心細い告白を小雨が聞いてもらったあと。
話は変わって、
あ、それほど変わっていないのかな、
おでんだと脇役っぽい
こんにゃくがおいしいよね!
というぐあいに
それぞれのお好みでわいわいできたの。
こんにゃくかあ……
小雨がこんにゃくだと
味が染みるのが遅くて迷惑をかけてしまわないですか?
下ごしらえも
臭みを取るためにゆでたあと
切りこみを入れてもらって
手間をかけてもらうのも
申し訳なくしょぼんとうなだれてしまわないかな。
せっかくのかつおだしとこんぶのおだし。
自信がなくても
その時が来たら、せめておいしくなれるようにがんばらないといけないな!
みたいなことをこんにゃくは考えました。
お兄ちゃんが同じおでんのおなべにいたらと想像すると
大きくて力強いほくほくじゃがいもだったりするのかな?
まるごとのパワーで
小雨だとひとつ食べきる前におなかいっぱいになりそうな大迫力のじゃがいもって
おいしくて
あったまるんです!
おすすめのご紹介をしてみました。
寒いときにはうれしいおでん。
きのうより暖かくなって迷っていたという蛍お姉ちゃんは決めました。
では、いよいよ本格的におでんがおいしい季節になる前の
このタイミングこそ
あつあつでなくても
素材の別の持ち味を引き出せる
やさしく懐かしいお味を楽しめる味噌田楽で
こんにゃくを私たちの主役にしましょう。

小雨がひっくり返りそうな事態に──
ううん、こらえたからひっくり返らずにいられました。
そうですよね!
いいお味のお味噌と
こんにゃくはベストパートナー。
お味噌にあうのは大根やさといも、なすもあるんだけど
そう──
脇役でいようと思ったこんにゃくは
お味噌のおかげで誰よりも輝いて
とてもおいしいごはんのおかずへと変わり
みんなに喜んでもらえる。
そんなことができるなんて
考えもしていなかった責任重大なおしごとを……
小雨がするわけではなくて
勝手に共感していた相手のこんにゃくのお話なんですけど。
きっと、うつむいていないでおいしくなろうとしたから
お味噌が手をとってくれて
ついにテーブルの真ん中の大きなお皿にいる。
おかわりも──
山ほど用意しておかないと。
ぜったい喜んでもらえるんですもの。
お兄ちゃん!
小雨はがんばります!
味噌田楽作り。
じゃがいもみたいなボリュームはなくても
勇気を出して
こんにゃくで
ごはんを食べる夜なの。
おなかいっぱいまで
大根とも、そしてなんと、さといもとも出会って
はじめて経験するようなときめき。
思いがけなく、ふいに見つけられるっていいですよね。