春風

『新年あけましておめでとうございます』
晦日の夜から
ずいぶん冷え込んで
今日は、お昼から雪も降ってきた
とても寒い年の始まり。
みんな早々に晴れ着を着替えて
白い冬景色の中に飛び込んでいったり
お部屋の中で暖かくしながら
それなのに、窓に顔をくっつけて冷たそうに見えたり
私の家族が元気いっぱいだった
これ以上はないような
縁起のいい新年の始まりです。
こんな晴れがましい日こそ、体に気をつけて過ごさなきゃ。
私たちが迎えた新年、
いきなり風邪を引いてしまったら
新しい年の神様にも笑われてしまうし
鼻をたらした子のところへ、心配しているのかあきれているのかわからないまま
みんなが集まっていって
その子供っぽいきょとんとした顔に、つい笑いがこぼれてしまったり
新年元日のさわやかな日は
もう少し、改まって迎えてもいいものなのに
少し前、晴れ着で大人っぽい顔をしていたみんなは相変わらず。
体が冷えてしまったら
おしるこで暖まってほしい
春風の愛がいっぱい詰まって
ぐつぐつ煮込まれて
とろとろ溶け込んだ
おわんを並べたら
上がる歓声は
よかった、
春風の気持ちが喜んでもらえたあかし。
年の始まりから春風の胸の中でふくらんで爆発してしまいそうな思いが
どうにかこうにか
役に立っているようならうれしい。
おせち料理
蛍ちゃんと力を合わせて
家族みんなもお手伝いをがんばって
みんなで作りました!
こんなに柔らかい
くりきんとんのすみっこのはしまで
家族全員の愛と
素敵な新年を迎えたい願いが込められている
縁起の良さのかたまりが
ここに形になりました。
みんなで囲んで
今年の幸せを信じ合うことができたなら
こんなに素敵なお正月は
世界中のどこにもない。
華やかな打ち上げ花火もなく
晴れ着で揃う時間もあまりなくなってしまったお正月だけど
この暖かな場所に
春風が望むものが全て詰まっている。
年末からときどき
冷たい水でお掃除や洗い物をがんばっていたら
寒いときにえらいね、
それでこそ愛する春風だねって
王子様の心の中が聞こえるような気がする
暖かな声をかけてもらえて
ときには心配そうに
そっと手に触れて気を使ってくれたり。
王子様。
あのとき、春風の手のひらは
一瞬のうちにたちまち信じられない温度に上がりきっていませんでしたか?
本当にわからなかった?
知らないふりをしているだけ?
春風が恥ずかしいことに
あなたに正直に伝えてしまった気持ち。
そうなんです。
ずっと前から不思議だったの。
灰かぶりの女の子がお姫様になるならば
本当に必要なのは魔法使いのおばあさんではなくて
王子様が私のそばにいる、
恋心が胸に宿った始まりの瞬間も
舞踏会の夜も、ガラスの靴を手にした探索のあとも
それからもずっと
いつも一緒にいてくれる
大事なことってただそれだけのことではないか。
ガラスの靴……
春風は、年末の忙しい中に落として
あなたに届けてもらっていたのでしょうか?
でも、お姫様になったら
みんなが喜んでくれる幸せなおせちの準備も人任せになって
お城の忙しいお仕事で会える時間もなかなか取れなくなってしまうような
そんな気もするので
春風は、お姫様になれるかどうか
あまり自信がないの。
その時、あなたも同じ気持ちで
大きなお城よりも、家族で同じ場所にいられて
今年も一年、良い年になりますようにと
それだけの同じ祈りを共にすることだけを願って
春風をさらってお城を抜け出してしまうのでしょうか。
王子様、
それがあなたの望みならば
春風はいつでも待っています。
遠い道のりも、何が起こるかわからない未来が待ち受けているとしても
どこまでもあなたについていくと誓います。
だからいつも春風のそばにいて
そして春風にはただひとつのことだけを許してね。
ひとときも休まずに続けている。
これから先、いつまでも途切れることのない
あなたの幸せだけを
春風の心の中に、いつでも夢見させてください。
お正月には、あなたの一年を祈ります。
ずっとずっと、春風の愛する王子様が幸せでいるように。
ただそれだけが叶うなら
春風の一年は
とても良い年になると決まっている。
春風にはもう
そんな年が訪れる、
間違いないと知っているんです。
一年の始まりを
あなたと過ごせたから
すぐにわかってしまったことなんです。
吹雪ちゃんは、おせち料理の由来をまじめに調べた様子で
どれほど縁起物の効果があるのか
今年一年、余すところなく丁寧に観察してきちんと調べるつもりなんだそうです。
おせち料理では黒豆が大好きみたいだった霙お姉ちゃんも
今年はまめな年になるのかな?
吹雪ちゃんの結果報告が楽しみですね!
海老の焼き物のおかげで
腰が曲がるほど長生きできるのかどうかは
そう簡単には答えが出ないと思うけど
私たちはこれからもいつまでも一緒にいて
いつかきっと、その結果を
見届けるのだと思います。
今年もどうぞ
あなたのそばにはいつでも
あなただけの春風がいることを忘れないでください。
これからの一年、よろしくお願いいたします。
春風が世界で誰よりも愛する
大好きな王子様へ
いつもとめどなくあふれ続けるこの大きな思いを込めて
新年のご挨拶を申し上げます。
あけましておめでとうございます。
今年もあなたの一年が、良い年でありますように。