星花

『新年早々』
おせち料理の重箱の中身も
おしるこもお雑煮も
お正月のために用意したごはんは
おうちでは、ついにお昼には完売御礼。
蛍お姉ちゃん、おめでとうございます!
何か違う?
なぜか喜んでいたからつい……
おもちは保存用をまとめてしまっておいて
冷蔵庫の中身も、保存がきかないものを探して
牛乳をみんなで分けして飲み終えたら
手分けして戸締りの確認。
今日からついに里帰り。
ママの地元の大磯へ
みんなでおでかけ。
しばらくの滞在です。
お世話になります!
おじさんのホテルに着く前も
電車に揺られる長い旅は
小さい子を見ていてあげないといけなくて大変。
すぐに泣いてしまう甘えんぼうさんたちを見て
お姉ちゃんは、星花たちも少し前までは
こんなふうに小さくて寂しがりだったのにっていうけど
本当?
まだ小さな、さえずるお人形か小鳥みたいな妹たちも
もうあとほんの少ししたら、
一人前のしっかりした女の子になって
しっかり家族の世話を見るようになれるはず、
なんだって。
星花がしっかりしているように、
って。
あんがい、しっかりしている?
まだ全然小さいつもりだったけど。
たまには、一人前に近づいているようにも見えるよう。
でも、やっぱり
本当は子供なので。
電車の時間に備えてのお昼ご飯のあと、
さあ準備を仕上げようと思って
夕凪ちゃんを誘おうって探すと
ヒカルお姉ちゃんたちと並んで見つめるテレビに映るのは
競い合うように肩を並べて走るお兄さんたちの
負けないって言っているみたいな熱のこもる走り。
区間記録の更新もあって
盛り上がる!
星花も見入ってしまったら
今度はいつのまにか
早く早く
旅行の準備をしましょうと
肩を揺さぶられている、
のんびりしている夕凪ちゃんはテレビの前から廊下まで転がされてしまう、
せきたてられる側にいつの間にか回っている
小さな子たち。
明日はホテルの部屋に肩を寄せ合って集まってしまうとしても
寒さに外出がおっくうになったとか
テレビっ子になってしまったわけではなくて
お正月ならではのことで
仕方ない!
向こうに着いて落ち着いたら神社で初詣、
明日は午前中から行こうとの話し合い。
せっかくの久しぶりの大磯も
早めに部屋に戻ってきてしまいそうで
風の子達ばっかりなのにね。
でも、ハートはたぶん
明日もテレビの向こうから元気をもらって
熱く燃えたぎる子たちのはず。
駅伝が終わった午後は
盛り上がりすぎて走り出してしまわないか
見ていてあげないといけない子が多い気もします!
星花はどうなんだろう?
それはたぶん、明日にならないと自分でもよくわからない未来。
今年一年の健康と
すぐにでもお兄ちゃんの元に駆けつけて活躍できるだけの成長を
元日は気持ちも新たに書初めに誓って
いい年になると、冷たくても凛とした新しい年の風を胸いっぱいに満たしてみても
寒さを知らないように走り回る元気な星花でありたいのか
みんなのお世話ができるお姉さんな星花が今年は生まれるのか
どちらも楽しそうな気がしてくるの。
お兄ちゃんは、今年の星花がどんなお正月を過ごすか
想像できているかもしれない。
星花が自分でもわからないことを
もう大人だから、もしかして?
今日は、旅行のじゅんびの
出発寸前、最後の仕上げを
頼ってしまってごめんなさい。
そして、ありがとうございました!
お兄ちゃんはもう済ませたあとの
きっちりまとめた控えめな荷物。
氷柱お姉ちゃんのお話では
男の人だから荷物が少なくて楽だとか
優柔不断だから、持っていくものを相談しても決まらないだろうし
やめておいたほうがいいと。
でも、星花はお願いしたかったから。
何が必要で、そうでないのはどれなのか
相談できる人にいてほしくて。
霙お姉ちゃんが、お兄ちゃんを探して星花たちの部屋に来たときには
お兄ちゃんに相談すれば、もしも忘れてしまった必需品があったとしても
きっと困っているときは颯爽と駆けつけて
責任を持って助けてくれるはず。
どんなときにでも頼りになるお兄ちゃんだから、
というようなことを言っていたので
それはいくらなんでもお兄ちゃんに頼りすぎですって
吹雪ちゃんや夕凪ちゃんと顔を見合わせた瞬間に一致した意見をもとに
追い返してしまったけど。
霙お姉ちゃんも、もう大きなお姉さんなのにね!
あんなに立派で頼もしいお姉ちゃんでも
甘えたくなることってあるのかな?
星花たちもあまりに頼りにしすぎてしまったのは
責任を取ってほしいというわけではなくて
そこは自分たちの判断で決めた持ち物なので
たぶん今日は
これからの旅行のこと、
まだわからない、これからやってくる時間のことを
お兄ちゃんといっぱい話したかった
たぶん、それだけのような。
おうちでのお正月も終わり、
楽しかった旅行の準備も終わり
これからしばらく過ごす大磯の暮らし。
たまには活躍したい夢を抱えた星花のささやかな願いが
かなうかどうかはともかく。
家族の全員にとって、
それから、星花をいつも助けてくれる
優しいお兄ちゃんには特に、と星花の思いも込めて
新たな年のはじまりを飾る
楽しい旅行になってほしいと願っています。