小雨

『寒い冬』
もう思い返すと
覚えていないほどずっと前から
すっかり冬になっていたような気がして
こんなに寒い日が続く
本格的な冬になってしまったなら
あとは寒さに備えて
みんなで力を合わせて耐えているうちに
すぐに──
でもないかもしれないけど
たぶん、そのうちに
待っていればどうしても。
小雨は冬は苦手でつらいのだけど
寒い時期ならではの楽しいことがいっぱいあると
みんなは言うから
すごい、
小雨の家族はすごい!
まだまだ小さい子も
経験を積み重ねたお姉ちゃんたちも
小雨が寒くて縮こまって
何もできなくなっているような冬のさなかに
楽しみを見つけ出すんです。
まぶしい……
なんという
あたたかな心の中なんだろう!
同じ家族でいられることがうれしかったり
そんな立派なみんなに囲まれても
何もいいところがない小雨なんだと思い出してつらかったり
でも、冬がどんなに楽しくて
終わらなければいいのに、とまで願いはじめて
行事がみっちりの冬休みも
あったかな食卓がますますうれしくなるのも
この時期だからこそウインタースポーツの楽しみも
それと、寄り添いあって暖を取ろうって
誰かともっと近くにいていい気がするのどかな時間も
寒い日が終わらなければと祈るなんて
小雨が聞いたら動揺しすぎて声も出なくなるほどの驚きなのだけど
そんなふうに
素敵なことをたくさん見つける人がすぐ近くにいて
小雨の手を引いてくれながら
願ったとしても。
でも、
必ずここにも
春がやってくるんです。
なんだか……
冬を楽しんでいるみんなを見ていたら
小雨一人がほっと暖かな春を願っていたらいけない?
寒い冬に暮らして
みんなでいるのも
それを願う人がいるなら
小雨もそうして、一緒に冬を過ごすほうが
うれしいような
だんだん、そんな気分になってきても。
でもやっぱり
北風を受けて首を縮めて
手を擦ったり、息を吐きかけ
さむーい、
春はまだかなあ?
二月、三月ごろになって
おうちの中でそんな会話も耳にするようになると
うん、
やっぱり春が早く来てくれたら
うれしいはず。
今よりも、
こんなに本当に耐えられるのか分からなくなりそうな寒さの中にいるより
大好きな人と同じ気持ちで
春を待つ
その時、
小雨はそれまでのどんな日々よりも本当に
心の奥から湧き出す気持ちを
言葉にしてみたくなる。
本当に、早く春が来るといいね。
暖かい季節がもうすぐだね──
心から素直に
言葉にできていると思うんです。
だからその時、
みんなで願える日が来るまで待っているの。
その時には
きっと、春が近い。
たくさんの芽生える予感を感じているはず。
いつか遠い日……
まだまだ先になりそうな日のこと。
あす朝の寒さは
ことし一番になりそうな予報!
冬はまだ長いのに
さらに寒くなって
これからますます小雨がぶるぶる震えだすと
どうなっちゃうんだろう、
本当にこんな弱気で頼りない小雨は冬を越せるの?
お正月が過ぎて一安心した頃にでも寒さのあまり
気がついたら冷たい風に吹かれて
ゆらゆら怯え続けた果てに
ついに消えてしまうんじゃないかなあ、
とまで考えるようになった
本格的な冬の
さらに強烈な
この寒さ。
ついに始まった冬休みの一日目、
大掃除をしてすっきりした気持ちで新年を迎えるぞ、
と張り切って声を掛け合っても
風が吹き付け、日が暮れたらすぐ気温は急降下して
押し寄せてきたあまりの寒さに
一人、また一人と
すぐ隣で年末の使命に頬を赤く染めていたはずの仲間たちは
知らないうちに脱落して行ったようで
あれ?
みんなどうしたんだろう?
こたつがある部屋の前を通りがかったら
超満員のぎゅうぎゅう詰めになった
猫だまりみたいな
女の子だまり。
と、お兄ちゃん。
こっちが暖かいよって
隙間を空けて、呼んでくれました。
お兄ちゃんと入るこたつって
こんなに暖かくて
小雨は一人で勝手に顔が熱すぎる気がしてくるほどなんです。
それは、小雨の冬休み最初の発見で、
もしかしたら今年は最後になる
暖かな発見でした。
残り少なくなった一年。
みんなが今日みたいな調子だったら
本当にすっかり汚れを落として
ピカピカになったきれいなおうちで
新年を迎えられるのだろうか?
ちょっと心配になったけれど。
でも、みんなと迎えたい新年。
たぶん今年も
寒くても風邪を引かないよう、みんなで協力して
お互いの体を守りながら
家族が揃って迎える新年になると思うんです。
がんばって大掃除を済ませたい気持ちと
一緒に、暖かくてほっとする時間を
こんなふうに同じ場所で過ごせるのがうれしい気持ちで
行ったり来たり揺らいでいる、年の暮れ。
今年も家族で迎える年末の
にぎやかなお部屋のすみっこあたりで
小雨は、優しいお兄ちゃんと
お互いを思う大きな声を交わしている
いつも元気なみんなのおかげで
どんなに寒い日でも、ほっこり暖かく過ごしています。