『アリーナ』
よく晴れて暖かくて
花のつぼみもふくらみ、
どこかから
楽しい歌が聞こえてくるのだから──
夕凪だって
踊ったり歌ったり滑ったり
機嫌がよくなるのも
仕方のないことだ。
おやつもごはんもこのごろは
ひな祭りの試作品で
ちょっぴり豪華だ。
こんな毎日が来たら、
夕凪は当然
理由もなく踊るんだけど、
さすがに家の中だけで
人目があるところではしない──
これではつまり
どこでもかわいい踊りをためらわない
青空ちゃんや虹子ちゃんのほうが
春が来るのを
心から喜んでいるようだ。
青空ちゃん、虹子ちゃん、
踊りがかわいいね、
とほめてあげると
どうもありがとうと言ってお礼を言うよ。
まるで夕凪よりも
ちゃんとしっかりしているようだ。
でも、夕凪だって
暖かくなるのがうれしいのは──
そんなに負けていないと思うんだ。
はしゃぎすぎて
いいリズムでテーブルをたたいて
怒られたりもしているし、
むずむず、
わくわくする子なら
夕凪しかいない。
ああっ、でも
おしゃれの準備をしすぎて服を散らかした
立夏ちゃんもなかなかかもしれないし──
よく考えれば
ちょっとすごいひな祭りの準備をしているホタお姉ちゃんや、
特に何かということはなく
明るい笑顔がきれいな春風お姉ちゃんや──
右を見ても左を見ても
明るい季節に浮かれる気配。
これはもしやお兄ちゃんも──?
夕凪がお兄ちゃんのことを知りたい季節になって
転んだり噛んだりする前に──
教えてみるのも
いいのかもしれないよ!
もうすぐ、子供も大人も春を迎える──
夕凪はお兄ちゃんといっしょにだ!