真璃

『雪の日のあと』
きのうの雪景色は
もうすっかり──
濡れて寒々しい眺めに変わり
冷たく白い雪も
日の当たらない陰にわずかに残るばかり。
あんなに楽しい日が
もう終わってしまったのね──
足元はべしゃべしゃ、
泥をはね上げる子供たち。
すこし、物悲しい──
でも雪のない日だからって
全ての希望を失ったような顔をする理由は
ないかもしれないわ!
寒くてべしゃべしゃだからって
子供たちが元気でいていけないわけは
ないと思うわ──
泥の汚れが足元を濡らし
靴の中までしみとおってしまう。
せつないわ──
だけどそのくらいで
元気に遊ぶ子供としての誇りを失ってしまうなんて
そんなことは決してないんだわ!
マリーのそばに
転ばないように真剣な子供たち──
水たまりを見つけて
声をかけ合うかわいい妹たち。
わかっていても──
泥で汚れている小さなあしもと。
こんなににぎやかな
眺めを前にして──
マリーが楽しくないわけがない。
なんだかみんなに
元気をもらっているみたいに
はしゃぐのはもうわかっていたこと──
きっと全盛から決まっていた運命よ。
それに、マリーわかっちゃう。
愛しいフェルゼンだって
いつもおしとやかでしつけのいいマリーばかりじゃなくて
たまに泥だらけで帰って来て
よく遊んだってほくほくしている子を
たまには見たいでしょう──
きっとすてきなフェルゼンも
泥だらけの日は
そんな気分だと思う──
みんながわいわい言いながら帰って来るのを待っている。
明日のお洗濯は大変そうね──
マリーがお手伝いをしているところも見たいわよね?
明日のフェルゼンはたぶんそんな気分だと思うわ。