真璃

『ラビリンス』
このお城から
この海までは
女王マリーのもの。
本当は世界の果てから果てまで
世界で一番の女王のものになるはずだけど
マリーの家はかわいい20人きょうだいの家族だもの。
みんなで仲良く分けなきゃいけないわ。
というわけで
子供たちが走る
お庭!
幼稚園やお姉ちゃまたちの学校と比べたら
町の子供が集まって運動会ができるほど広くはない。
でも、不満はないわ。
ここがマリーのおうち。
みんなといられる場所なのよ!
だからぁ、
とりあえず
マリーはこのお庭でみんなと遊べることが大満足です、
という前提があって
それはそれとして
広いお庭に
好きな場所がいっぱいあって
眺めがよかったり
面白い形の石が落ちていたり
落ち葉がたくさん拾える場所だったりと
それぞれの一番が少しだけ違うのなら、
お庭の取り合いっこをするだけの
ゲームをはじめても
話におかしいところはないでしょう?
みんなわかっている。
ここがマリーの領地だ、
こっちがマリーが遊びに行く観月の土地なのね、
なんて線を引いて決めたとしても
明日には元気な子供たちの足で踏み荒らされ、
おそうじの箒で仲良く遊んだ後は消されていく……
さくらはせっかく書いたのにって泣いちゃうけど
でも、そういうものだと
いつかわかるの。
儚いのも人生だってこと。
だからこそ美しいのだということ。
まあ、さくらにはちょっと早いかしらね。
でもマリーもほんのわずかだけ寂しい気持ちがあるから
自分が思っているほど──
そこまで大人でもないのかもね。
まあいいわ。
そういうことで、今日もあんまり後のことは考えないで
自分の好みだけを言い出して──
この広い領土の奪い合いを始めるわよ!
そうね、今日はフェルゼンも遊びに来てくれているから
フェルゼンが立っている辺りが一番の激戦地になるかしら。
逃げたりしたら
はてしなくテンションの上がった子供たちが
地の果てまでも追いかけてくるわよ!
なにしろお庭の、じゃなかった
この世界の隅から隅までを取り合う戦いですもの。
逃げ場所はないから
覚悟しておいてね。