真璃

『ときめきの時間』
小さい小さい
それはまだお姉ちゃまたちにとっては
赤ちゃんとまるで変わらない!
みたいに言われるほどの
子供でしかないマリーたち。
でもやっぱり
赤ちゃんじゃないもの。
フェルゼンが喜んでくれそうな贈り物を
たくさん届けるわ!
たとえばまずは
これ。
つるつるまるまる
光沢を放つ
てっかてか
泥団子。
丸めるのも
ちょっとしたコツがいるけれど
一番は──根気!
壊さないように優しく触れながら
手間をかけただけ
きれいになる
うっとり見とれそうな丸さと輝き。
マリーの技と執念で
こんなにきらめく宝石ができるなんて
まるで恋!
情熱のぶつかり合うステージ!
でも、家に持っていけないし
服が汚れるからあんまり毎日は作れないの。
せっかく作っても
翌日に見たら壊れている儚さ──
でもそれもきっと美しさだと思うわ。
というわけで、小さい子が見つける良いものは
持って帰れないものばっかり。
帰りにふと顔を上げたら
見つけられる
きれいな夕焼けの色だって
これぞと思って
いっぱいに伸ばした両手で捕まえ
見せてあげたいのに──
そういうわけにはいかないものよ。
だからせめて
どんなに丸い泥団子だったか、
どんなにきれいな夕焼けだったかを
ぜんぶ伝えられるように
フェルゼンの顔を思い浮かべながら考えながら帰るの。
それが小さな子に与えられた
よろこびのすべて──だからそれだけでいいの。
そしてうまい具合に空いている両手で
ぎゅーっとできたら
もう他には何もいらない。
今はまだ──
それでいいの。
あ、もちろん帰って手を洗ってからね。
フェルゼンも紳士なんだから
お帰りのキスも──
手を洗っている間だけ待てるでしょう?