『うつくしいわ』
マリーはまだ小さいから
審美眼もたいしたことないけれど、
わかることだってあるわ。
人の心に
忘れられないものを残してくれる
喜びや愛おしさ、心震えるすべてが
芸術だというのなら──
この秋──
みんなを思って
春風お姉ちゃまが一生懸命に作るお料理や、
霙お姉ちゃまのおすすめする本、
さくらや虹子がヒカルお姉ちゃまに
いつも遊んでくれるお礼で描いた
似顔絵と同じくらいに──
私たちを思って、
へとへとになるまで
体を動かして遊んでくれた
ヒカルお姉ちゃまのすてきな寝顔もまた
疑いようもなく
芸術であることを
マリーは知っている。
体力に限界がない
子供たちが
甘えてばっかりで
ついに、ヒカルお姉ちゃままでも
倒してしまったわ。
こんなことってあるのね──
遊んでほしいちびすけたちのおねだりは
まだまだ止まらないのかもしれない!
暑い日は続くけど、
秋らしく涼しい時間に出会うことも増えて
これから、わがままな小さな妹を持つみんなは
どうなっていくの!?
マリーは考えたんだけど、
秋のお楽しみは、芸術もあり、そしてまた
行楽もあるというわね──
あら!
これって、なんだか
マリーがお出かけをおねだりしているみたいになってしまうわね。
でも、まあそれでもいいか。
かわいくて元気な家族に囲まれた
わたしのすてきなフェルゼン──
マリー、こんなにいい季節に
おでかけに行きたいわ!
世の中が大変で、簡単なことじゃないかもしれないけど
秋めいた気持ちの良い風が吹くと
つい、願ってしまう。
どこだっていいのよ。
ちっちゃい子たちにも
広いところへ連れて行って疲れさせるくらいのこと、やらなくちゃ!
マリーも──あなたと一緒に、行き先を考えたい気分だわ。
今、みんなや──フェルゼンと、そんなふうに過ごしたいの。