氷柱

『アルンハイムの女王』
朝目が覚めて
玄関から飛び出して行った子、
裏口を出て寄り道して
表の庭を歩く子、
一日の用事を済ませて帰ってきた子。
暖かい部屋の中で
飲み物を手にして眺めている子──
残念ね。
庭の花壇は
真っ白な霜に覆われ、
裏山の方へ続く
緑が茂っていたあの道も
葉を落とした木々が頼りなく立つ
寂しい景色に変わった。
やがて春が来るまで──
この寒さでは、果たして本当に冬が明けて
春が訪れるのか
心配している子もいるようだけれど、
仮にその時があるとして
春が来て──
みんなのところに
芽吹きを知らせる豊かな風が届くまで、
景色はずっと
凍りついたまま。
楽しいこともなんにもなく、
喜びも悲しみも
氷の中に閉じ込められて
いつ明けるかもわからない
長い冬が延々と続くの。
外なんて寒いから
帰っていらっしゃい!
こたつにみかんがあれば、
ヒイラギの枝に星の飾りがあれば
少しは気分も違うかもしれないわ。
それまでは──
北風の吹き付ける庭なんて
死に絶えた命と
わずかな人間たちの孤独の檻。
見つかるものも、うれしいものも
何にも見つかるはずはないのに!
それでもわいわい
希望に満ちた顔で
弱い光を灯す太陽の下に走っていくのよ。
なんなのかしら?
もう気付かないほど学習能力がないというわけでは
ないと思うのだけど──
冬が来たせいで食べ物を集めようとする野性が目覚めて
悪さをはじめてしまったのだろうか?
たとえ世界中を渡り歩いてありったけの燃料をかき集めても
まだ春は来ない。
冷たい白い息、
赤くなるのは鼻の先。
まったく──
寒いんだから、早く帰ってくればいいのにね!