星花

『エンゲージ』
今日は海晴お姉ちゃんと
お庭を歩きました。
もうすぐ色んな花が咲く前の季節。
寒い冬を耐えて
これから楽しいことがたくさんやって来る予感で
胸が膨らむ頃。
まだときどき吹く風は冷たいけれど
もう星花たちは厳しい時期を乗り越えてきたんだもの。
こんなのは平気です!
力のつくおいしいものを好き嫌いなく食べて
こうしてみんなと遊んで鍛えたら
なんとかなる──
そんな気がする暖かい春の始まり。
海晴お姉ちゃんも小さい頃から
この庭でよく遊んで
体を鍛えてきたって。
勢いよく駆け上がった坂道。
ボールを投げあうのにちょうどいい広場。
つかまらないように逃げた鬼ごっこで辿る道。
よく潜んだ隠れ場所は
悲しい時に一人になるときに逃げ込んだ場所。
今はもうお兄ちゃんがいるから必要ないけど──
星花が悲しい時には使ってもいいんだそうです。
昔から変わらないままのお庭で
育った妹たちもみんな
よく遊んでたくさんのことを覚えて
海晴お姉ちゃんみたいに大きくなれるはずだと
そう言っていました。
星花も今日はなんだか
ああ、そうなんだ──
きっとそうに間違いないんだろうなあと
思いました。
いつもなら少し
海晴お姉ちゃんみたいにきれいになれないと
心のどこかで思っているのに
今日だけは──
季節が移ろう途中の日には
特別な気持ちになれる時が
たまにあるかも──
珍しく思いにふける時間。
変わらない景色に
お兄ちゃんがやってきて
星花は少し大きくなっている。
来年も
そのまた来年も
この季節にはまたお庭を歩いて
暖かい日差しが気持ちよくて
うれしい気持ちを聞いてもらえたら、
そうなれば
とってもいいですよね。
ささやかで小さな
願いかもしれないけれど
冬を乗り越えた後のいい景色。
またみんなと歩けたら──
本当に、そうなるといいですね!