『影に隠れて』
目にしては
いけないもの──
口に出しては
いけない言葉、
憶えていたら災いを呼ぶお話など
世の中に不思議は
たくさんあると聞きました。
とはいうものの、
怪異を調べていくと
電話越しの異様な音は
自然現象の大嵐だし、
無人の船は
救命ボートで脱出した形跡があったり
写真の向こうでこちらを見つめるのは
シミュラクラにすぎないと──
説明が付く場合もあるそうです。
立夏姉が言うには
こういった現象を表して
話を盛る！
というそうです。
盛る──なるほど、
詩的で程よいユーモアがあります。
それよりも気になったのは
実は蛍姉の話に
ときどき割り込んでくる、
妹たちの秘密基地の情報──
目につきにくい場所を探し
ジョイントマットで、段ボールの余りで、
カレンダーの先月分の裏側の白紙で
建築していく隠れ家。
キミも一度や二度は
見たことがあるでしょう。
いつ掃除のついでに片づけられるかわからない。
しかしそこには
部屋からはみ出たお気に入りを運び込む
もう一つの生活圏が新しく生まれる。
それは子供の日々を変える発明であり
散らかった風景を離れて
選び抜いた宝物と
好きなおやつだけを持ち込むことも可能である──
そう、確かに衣替えの季節は周囲が散らかりやすく、
集中力も落ちやすい。
快適な休憩場所が見つかるならば、
狭さや暗がりも我慢できるかもしれない──
しかし、もし作るならば招待する人を選ぶ必要はあるでしょう。
キミを誘う前に
いくつか質問をする場合があったら
その時は──心得て回答をお願いします。
