『ディザスター』
そう──あれは
おうちの中でもおそろしい噂を聞くことがある
階段下の暗がり。
その先にある物入へ
蛍がみんなの着替えをしまおうと
えっちらおっちら運んでいったなら
なんとそこには──
うーん。
どうもあんまり怖さが出ないし
暗がりの怪しい噂と言っても
だいたい小さな子が
秘密基地を作っているだけだったりするし
そっとしておきたいし──
それに何より、
噂があったら
氷柱ちゃんが確かめたくって
すぐ暴いてしまうんだもの。
それをよく知っている
吹雪ちゃんには
通用しない──
晴れた日が続いて
秋から冬への進み具合も
なんとなく緩やか。
穏やかな空気が
私たちの家を包み込んでいるようです。
でも、いつ急に寒くなるか
考えたら──
吹雪ちゃんだって寒さに強いといっても
なにしろ人間だもの!
ちょっと疲れた時などに
薄着のままでいたりしたら
どうなってしまうだろう!
心配です。
星花ちゃんと夕凪ちゃんにも
よく見てあげるように頼んでいるけど
二人もまだ小さいし──
吹雪ちゃんは、物を増やすのが好きじゃないし
今の服を着まわせば
それでいいみたい。
だからこそ、
ぞっと背筋も寒くなるような怪談で
寒気を感じる?
重ね着しなきゃ!
という方向へもっていこうと思ったのに
蛍は怖いお話をするのがへたくそだから
ぜんぜんだめ。
実を言えば、吹雪ちゃんたちが通う小等部の怪談なら
いくつか心当たりがあるんだけど。
それは、暗くなる前にちゃんと帰らない子に話すとっておき。
氷柱ちゃんでも正体をつかめなかったのは──
あれっ、そういえばお兄ちゃんも
最近は帰りが遅いですね。
すこし心配です──
……
あ、先に吹雪ちゃんだった。
お兄ちゃん、何か吹雪ちゃんを暖かくできるアイデアはない?
服を着てもらえるくらいに
怖いお話がうまくなる方法って
やっぱり練習しかないかなあ?