『ステップアップ』
小さい子たちのお部屋の壁には
いつも似顔絵がたくさんあって
お兄ちゃんも私も大勢の子に囲まれて笑っている。
最近は切り紙アートが少し増えたみたいで
入り口からのぞくだけで楽しいお部屋!
貼り紙の位置も下のほうに並んでいたのが
お兄ちゃんやお姉ちゃんたちが貼ってあげているあたりへ
だんだん近づいてきています。
ちょっと斜めに曲がっていても
雨の後に体を伸ばす花壇の緑のように
泣き顔を見せながら
あっというまに伸びていく。
もうそろそろ壁がいっぱいになってしまうと
いくつかはがして片付ける必要もあるし
もったいない気がしますね──
蛍の部屋に持っていったら
氷柱ちゃんに怒られると思う?
もし捨ててしまったら
蛍と遊ぶ約束も忘れたように晴れた日差しを喜んで
外に出て行って駆け回る子供たちは
もう同じものなんて作ってくれないかもしれない──
記念になるって喜んでいるのは
私たちのほうだけなのかもしれません。
それにしてもよくできている
紙でできたお花──
計算しながら作ったのでしょうか?
かわいいですね。
すごいものを考えて
えらいねって抱っこしてあげたくなるの。
それにこちらの
すごい大きなお顔の似顔絵。
山よりも家よりも大きく
女の子たちを追い抜いて星に届くところまで。
こんなに大きなものが子供には見えているのかしら?
私も子供だったときがあるはずなのに
どうも見つけた記憶がないな──
最近やって来たのかもしれませんね。
それとも、お兄ちゃんがこんなに大きく見えているのかな。
蛍が子供のときにはいなかったもんね。
なかなか似顔絵を書いてあげることのできなかった私のお兄ちゃん。
今からでもモデルになってくれますか?
ともかく今日は大騒ぎで散らかす子のいないうちに
はりきって掃除機だけでもかけておきましょう!
きのうより体が大きくなると
散らかす範囲もぐっと広がっていくようです。
一緒にお片づけしてくれるお兄ちゃんとお姉ちゃんがいる子たちが
うらやましいな──
でも蛍が小さな頃はお姉ちゃんたちもあまり年が変わらないのに
誰が片付けてくれていたのでしょう?
もしや蛍があまり散らかさない良い子だったということに?
ともあれ散らかす技も片付ける技も子供の頃より鍛え上げた
大きなお姉ちゃんが向かいます。
まだ背が伸びる可能性もなくはないけど──
とりあえず小さくはないお姉ちゃんのはじめるお仕事です。