氷柱

『年末の仕事』
この年のうちに
済ませておきたい仕事が
人にはたくさんあるらしい──
おせちの準備に
お正月飾り、
晴れ着の用意まで今のうちにしておこうと思ったら
残り少ない一年に
だいぶ忙しい時間を送ることに──
大掃除もあるし
おまけに寒さはいよいよ厳しい。
体調を崩したら
いくら思い残すことなく新年を迎えたって
あんまりさわやかでもないし
仕方がないわけだから。
年末という時期に
人は予定をたくさん入れるものだけど、
働きすぎて休むのをうっかり忘れる子がいたら
たしなめるのは──
家族としての仕事だものね。
というわけで
大掃除を予定通りに早めに済ませた子から
順番に──
みんながちゃんと
休む場所を作る
お茶の支度のお仕事を始めることになったわ。
まだ用事がいっぱいある
忙しい人たちに
お茶を用意したんだからと強引に話を進めることができる
それは年末を支える大事な裏方──
いなくては場が回らない
誰より重要な家庭の中心人物。
本当ならここには
キッチンを踊るように巡る
春風姉様やホタ姉様がいるはずなのに
なにしろ年末、
手が空いているのは
どたどたと足音もうるさく手際もおぼつかない
不器用な私くらい。
そしてまた
本当なら──ここには、
体だけは丈夫で役に立つ
我が家のただ一人の、
それはもう頼りになるらしい長男がよくいるはずなのに
今は力仕事に駆り出されて姿は見えない。
汗をかいて働いているところを引っ張って
座らせる仕事が私にはあるらしい──
ばたばたした忙しい時期には
慣れない仕事も増えるみたい。
大丈夫よ。
みんなが休んでいった後で自分が一人で過ごす時間は
ちゃんと計算に入れてるんだから。
近いうちに一人また一人
それぞれの仕事を終わらせて──
そうなればエプロンを外して大事な仕事を譲って
あとは、年末年始をゆっくりのんびり。
私の計画に狂いはないわ──
もうすぐテーブルにはお正月メニューの試作品が並ぶに違いない。
おもちもそろそろかしら。
今はここがいつでも休憩できる場所。
臨時雇いを買って出た氷柱の仕事もあと少しよ──
渋いお茶とレンジで温めたお菓子でもう少し我慢することね。