ヒカル

『積み重ね』
日に日に寒くなっていって
外で運動できる時間も減っていく。
これから冬になって
たぶん、一緒に体を動かしてくれる人も減るし
それにこのままでは
自分自身も家の中にこもって
のんびりしたくなるのは
わかっている──
無理に動いても怪我をしたらいけないし
道が凍っていたりしたら一大事。
そんな理由を付けて
天使ヒカルは体がなまっていくシーズンに突入する──
だけど、本当にそうだろうか?
日の当たる道、
動きやすい時間、
暗くなる前に急ぐ帰り道。
私はもうだいぶ
走るのに悪くない場所や
冬が来たってそんなに困らないで
みんなと遊びに行ける公園なんかを
知っているんじゃないか?
何気なく過ごしていた毎日の
記憶のどこかに
そういうものがあって──
求めていたパズルのピースが
全ての形がぴたりとはまるように
寒い季節に向かっている今、
特に気にしていなかったことが
私を助けてくれるようになるんじゃないか──
と、思いたい。
でも、そこまで自信を持って言うには
まだまだ自分の未熟も知っている。
世の中は知らないことのほうが多いってこと。
ときどきは人より物を知っていて
たいていはなんにも知らなかったのに気付くということ──
そういうのを
小さい子と遊んでいたり
妹の蛍や氷柱に頼りになる場面が多くなったり
守っていたはずの春風に甘えてしまったり
一人でできるつもりだったのが
助けてもらうほうが全然早かったり──
と、いったようなことを
日が暮れた帰り道に考えたりしているんだ。
困ったことに
冬を乗り越える最適な私なりの方法はまだわからないけれど、
みんなの話を聞きながら
だんだん──行けるところを増やしていって
走るのをやめない──
それが本当に、できたらいいな。
まだ全然自信はないまま──
それでも、冬はやって来て
家の中も私の心の中も
何かとばたばたしはじめているんだ。