『日記のこと』
今日も日記に書きたいことはたくさんある。
青空が恐ろしい大きな虫を拾ってきたこと。
お手伝いの約束を忘れて、怒られたこと。
立夏ちゃんがまた調子に乗って人を困らせたこと──
それから、他にもいろいろ。
でも、こんな話をしたって仕方がないし
誰も喜ばないもの。
私は特に
人に伝えて建設的な状況になることは
あんまり言えないの。
好きじゃないことも──
特別に大好きなことも。
私の好きなことは
ただひとり、私個人だけのもの。
たまに、わかってもらえたような気がしても
別に門限が伸びたり
遠出の許可が出たりなんてあんまりない。
いつか大人になったら
そんな言い訳は通用しなくて
誰かに伝えなければいけなくなる時もある──
とは知っているけれど
まだ子供なんだから、別にいいと思う。
本当は、私がいつも拗ねているだけで
伝わらないなんて
そんなことはないのも知っている──
立夏ちゃんが人を怒らせようとしているわけじゃなくて
本当は優しいんだってことも知ってるの。
小雨ちゃんは、一人でも勇気を出して
自分の日記を読み返したんだって。
でも、お兄ちゃんにそれを伝えるのは恥ずかしいから──
自分からは伝えられない、
って言ってた。
恥ずかしいのかしら?
一人でもできるんだって、立派なことのはずなんだけど。
小雨ちゃんが恥ずかしがっているなら
もっと恥ずかしいことを普段から言ったり
日記に書いている私はどうなるのかしらね?
それも、言っても仕方のないことだわ。
最近はなぜか暖かい日が続いて
みんなの服装がだらしなく、
外で遊ぶ時間も増えて騒がしくなっている。
一人くらい、服装もちゃんとして
まわりに流されず規律正しい行動をする人がいたら
それは──めんどくさい話しかしないのを補うくらい
ちゃんとした生き方ということになるのかな。
今日の日記はここまで。
人に聞いてもらいたいような──
私の大事な、
書きたいことが100くらいあったとするなら
ひとつくらいは書けたのかな?
別に知らないけど──そんなこと。
ほんとよ。