小雨

『百物語』
お、
お、
お、
お兄ちゃん──
あの、お兄ちゃんは
怖い話って信じるほう?
あの、というか
怖い話を聞いても
大丈夫なほうですか──?
小雨はね、
あの、その、
恥ずかしいのだけれど──
というか言うまでもなく
わかってしまうかもしれないですけど、
そうなんです!
小雨はとっても
苦手なんです!
怖いのが!
です!
ぷるぷる……
それで、もちろん
私たちのおうちは
20人もきょうだいが
いたりするので。
そう──
怖い話が好きな人、
話したい人聞きたい人
たくさんいるのです。
小雨は
いやだなあって思うんだけど。
そんなとき立夏ちゃんは
小雨の手を取り、
怖い話というのは
不思議なことに
苦手な人ほど!
好きになる可能性があるのを
立夏は知っている──
と、そう励ますの。
ええっ、
まさか──
このままではいつかやがて、
怖い話を求めてさまよう
小雨が。
お兄ちゃんのもとに現れるかもしれない。
そ、そうなってもお兄ちゃんは
小雨のことを嫌いにならない?
あんまり自分では
そうなのかなあという気は
まだぜんぜんしないのだけど、
でも
もしかしたら──
ほら、お兄ちゃんには
聞こえませんか──
まだ見ぬ見知らぬ妹が
近づく足音──
なんちゃって。