小雨

『私のお人形』
小さい時から一緒にいる
小雨の大事な友達──
うれしい時も、泣きそうな時も
いつも小雨のそばに
優しいお人形がいました。
もう六年生にもなって
ずっとお人形に助けてもらうばかりでは
いけないけれど──
今も小雨のお部屋の
大事なものをしまう箱の中に
お人形は眠っていて、
大掃除や季節の片付けがあったら
たまに箱を開けては、
眺めています──
物持ちがいいのは
いいことですよね!
小さな頃は、
お姉ちゃんたちと服を作っては
着せ替えて楽しんだものですけど、
ここ最近は同じ服のまま。
いつか、妹たちと遊ぶ時に
やっぱり今も現役で活躍している新しいお人形の服を
作るついでに──
この子の服も新調させてあげたいと
時々思っています。
小雨があまり器用じゃなくて
みんなと遊んでいるだけでいっぱいいっぱいだから
自分のお人形までは手が回らないけれど
いつか──
そうなったらいいな。
このところ、おうちで人気の
怖い話のいくつかは
お人形が出てくる話も多いみたい。
飽きて大事にしないでいたら
怒ってしまったり──
ときどき、悪いものから守ってくれたり
いろんなお話がありますね。
かわいいし
きれいなお顔でも──
急に動いたら、それは驚いてしまうでしょうね。
でも、小雨のお人形は
優しくて──
いつも一緒にいて明るい気持ちをくれる子だと
小雨は知っているから、
あんまり怖いお話でおびえている子がいたら
全然大丈夫だと、
教えてあげたいと思っているんです。
でも、小雨が言ってるだけじゃ
あまり効果はないかなあ──
もっとお話が上手で説得力がある子なら
伝えられるかもしれないんだけど。
誰か──小雨が頼れる人と言っても、
立夏ちゃんは──お人形がなくても明るくて優しいし
麗ちゃんは──こういう子供っぽいのがもう恥ずかしいみたい。
うーん──
お兄ちゃん──小雨がいつも頼りにしているお兄ちゃんは
きっと強いからお人形はいらないかな?
今はもう、あまり出番がないままのお人形。
今日は久しぶりに顔を合わせて
風通しのいい場所で一緒に過ごしました。
まだもう少し──
小さくて弱気な小雨を
たまに励ましてください。
涼しそうな服もいつか作ってあげないとですね。