『なくしもの』
失われた
子供時代──
特に春風がこだわっているようだ。
大人の都合があったのはわかる、
仕方ない。
だけど、わかっていても
家族みんなが大好きな長男と
子供時代を一緒に過ごすことができていたらなあ!
という願いだ。
気持ちは理解できる。
どうにもならないことだけど
言ってみたくなる。
ただ、まあ
もともと出会わなかったかもしれない家族が
いろいろあって
離れたり
今、こうしてよくわからない話をして
ああでもない、こうでもないと
やくたいのない意見を交換したり
とりあえず今日も
一緒にいる。
私たちは宇宙の塵に過ぎないのに
出会った別れた、
同じ時間を過ごすことができたと
いちいち大さわぎをして
わけがわからないな!
いったい無にも等しいわずかな宇宙の欠片に
何があってこんなに話が複雑になるのだろう?
いつか、どこかの
頭のいい誰かなら
答えを出せるのだろう──
というわけで
私はこの件に
積極的に関わるつもりはないから
春風が何かとうるさい時は
細かいことは置いといて
ただそばにいてあげたらいい──
それだけアドバイスをして
あとは放っておくことにする。
人間のすることは
私のちっぽけな常識では表現できないほど
あっちにいったりこっちにいったり
ちっぽけな原子の運動にも似て
飛び跳ねるから、
たまにそのうち
時間くらいはどうにか手のうちにしてしまうかもしれない。
怖がりの子供の頃を一緒に過ごして
助けてもらいたかった
春風の願いも簡単に叶う時も来るだろう。
全ては宇宙の隅で起こる振動に過ぎない──
いつか、やがて時が来たら取り返せるのだろう。
その時は、当たり前のように
私もまた──
と、想像してみる程度に
私はとどめておくことにしよう。