『育つのは』
今日は一日
ずっと雨降り。
お手伝いが得意なさくらちゃんも
お休みの日でしたね。
雨が降って濡れないか
灰色の雲の切れ間を
見守るお仕事は
蛍も小さい頃からよく続けていました。
あれで意外と──
いざという時の
洗濯物を取り込む順番、
置く場所の確保と
考えることはいっぱいあって
縁側で薄い日差しを浴びながら
ぼんやりする
楽しい時間。
必ず将来役に立つお手伝いです。
そんな仕事が大好きだなんて
さくらちゃんはえらい!
立派になるに違いない!
将来有望の期待株──
蛍もすぐに追い越されてしまいそう。
やがてその時が来て
引退したあとは
昔とっても
みんなに喜んでもらえる
幸せな仕事ばっかりしていたんだなあと
日の当たる縁側でまた
ぼんやりする時間に戻っていくことだろうな──
早く大きくなってね、さくらちゃん。
こんなにすごいさくらちゃん、
とってもうれしいご褒美に
お兄ちゃんが眠る前に
ご本を読んでくれたりするというのだから
そんなの、明日も張り切ってしまうに決まっています。
あれ?
ちょっと不思議なことに気が付いたのですけど──
小さい頃にやっぱりお手伝いをしていた蛍はどうして
お兄ちゃんに寝かしつけをしてもらえなくて
一人だったのでしょう?
ははあ──なるほど。
これは、今からでも
失われた時間を取り戻すため
今だからこそできる夜のお茶会を開いて
お兄ちゃんの一日をねぎらうなど
すればいいんじゃないかなと
そういう話になっていくのですね。
子供のころから遊びでよく書いていた
おままごとへの招待状──
ときどきさくらちゃんからもらうのと同じのを
ずっと前から
蛍も練習していたんだもの。
こういうときに
使うものだ!
と、
お姉ちゃんとして
みんなに教えられるお手本になれ、みたいな話ですね。
とてもがんばって作った
招待状──
とてもがんばって準備するのは
愛しい人を招くお茶会。
子供のころから練習していたのと
なんにも変わらないそのまま──
お兄ちゃんにお届けできるようにしてまいりました。
フフ──
冗談っぽく言っているけれど、
半分くらいは──ううん、もっとかな──
そんなに冗談でもないんです。
お兄ちゃんの好きなものをたくさん準備しておきたいな。
今のうちに──たくさん聞き出しておかなくちゃ。
後できっと役に立つはずです──