綿雪

『お姉ちゃんのおすすめ』
秋の夜長を
いつもすぐそばにいてくれるのは、
どんな時代も変わらぬ
子供たちの友人。
ページを開くと会いに行ける
面白くて──
楽しいことがたくさんの
一冊の本。
退屈も
さみしさも
瞬きの間に吹き飛んでいくの。
お兄ちゃんと遊ぶほうがいいっていう子が
わがやにはたくさんいるかもしれないけれど、
忙しいお兄ちゃんのことだもの。
いつでも一緒にいてもらうわけには
なかなかいかないですものね。
ユキがベッドで眠るとき、
枕元に置いておくと安心できるような
そんな本は、
今日は何がいいだろう?
海晴お姉ちゃんが詳しいと聞いたから
何冊か借りてきたんだけど。
それは──
広い何もない砂漠で出会う
少年のお話であったり。
昔の汽車でたどり着いた
駅にたたずむ少女のお話であったり。
ラベンダーの香りのする謎めいた語り口、
あるいは、町はずれに住む
不思議な何者かの正体を探る物語など。
実は──もう読んだことがある本も
ちらほらあったりします。
でも、海晴お姉ちゃんは
本を読むことは
いつでも出会いなのだから、
それを手に取った時の素直な気持ちを忘れずに
読みたいと思ったら読めばいいよ!
だって。
一緒に聞いていた吹雪ちゃんは、
なんだか無責任じゃないでしょうか?
って、目を回していたの。
ユキは自分の気持ちと向き合って
今一番読みたい本を
見つけ出すことができるのかな!?
ふふ──
あれもこれもと手を出して
ついつい夜更かししてしまう気分だと──
きっと、お兄ちゃんに見つかって
叱られてしまうことも
これから続く秋の日々──
どこかで、あったりするかもしれないね。