『魂の叫び』
まるで一日ごとに
秋が深まるみたい──
過ごしやすくて
夏の名残の葉の色と
ちらちらカボチャ色に包まれ
街の眺めもきれいなこのごろ、
夕凪の毎日。
じゃあ、
夕凪、歌うね!
あーあー
ああー
悲しいな。
ひねっても
まわしても
どうしたって
ガスコンロが
なかなか
つかないー。
古いのかな、
故障かな。
おうちのガスコンロが
つかなくて
みんながこまる
秋の日の
ことー。
お兄ちゃんも、
こまるでしょ?
夕凪もたまにお手伝いをして
一生懸命拭き掃除で
きれいになったあの
ガスコンロが──
なかなかつかなくなってしまったの。
春風お姉ちゃんはのんびり
つまみを押してまわして
どうしたのかなあ、
あとちょっとで
つきそうな感じは
するんだけどな?
って言ってる。
ああー、春風お姉ちゃんかわいそう。
でも、ガスだから危ないし
あんまりいじらないように
するんだって。
修理の人がー
はやくー
こないかな。
いつも使っているものが
こんな調子だと
家族も顔を合わせては
ガスコンロ、
ガスコンロ。
修理の人が着たら
歌って頼み込んで──
直ったら
歌ってお礼を言う準備もしている。
いや、普通に頼んでお礼を言うでもいいけど。
あーああーあ
あー。
夕凪はときどき歌い出すよ、
うれしいときも
そうでないときも
いつものお手伝いが一つ減って
手持ぶさたな時も
夕凪の声は
聞こえるよー。
そういうものでしょう?
ところかまわず
わけもなく
みんなに届ける歌が
明日はもうちょっと
素敵なものだったらいいのに!