綿雪

『かさかさ道路』
帰り道も寒くなってきました。
暗くなる前に
家へ帰る足取りも余裕がない。
赤や黄色の葉が落ちる道を
せかせか
首を縮めて歩く。
お兄ちゃんも、帰り道は心細くなかった?
小学校の図書館で
見つからなかった本を探しに
小雨お姉ちゃんと本屋へ向かうと
ユキはつい──
お姉ちゃんが隣にいてくれてうれしいのか
寄り道でテンションが
アップ↑
してしまうのもいけないのか
もう少し、
もう少し見ていっても
いいでしょうって
お願いをしてしまう。
そうすると──
帰り道が暗くなってしまうことは
わかっているのに。
いけないですね。
でも、たまになら、今日だけならって
わがままを聞いてくれる
ユキのお姉ちゃんが
いるの──
うれしい──
探していた本は
おこづかいが足りなくて買えなかったけど
それでもいいの。
本当に──それでちっともかまわない。
街灯がぽつぽつと灯り始める
ねずみ色の空の下。
手をつないだ家族の
二人分の足音。
落ち葉を踏む音もやがてひとつにそろうように
かさかさ
こそこそ。
小雨お姉ちゃんとお話をしたの。
明日はお兄ちゃんが
一緒に帰れるかもしれないって言ってくれたんだって。
そしたらお兄ちゃんは
暗くなる前にしっかり手をつないで帰るかな。
それとも──ユキが
もう少しお兄ちゃんと歩いていたいよって言ったら。
ユキはあったかくして帰るようにしています。
毎日、きっと──そうしています。
お兄ちゃんも風邪をひかないように気を付けてね。
ユキがいつも心配しているからね。