立夏

『あつあつ』
ひゃー!
まいにちまいにち
なつだー!
あああ……
あっついー!
これはもう
やったー!
ってなるよね。
暑すぎて。
日がぎらぎらしはじめたらすぐ
もうどこもかしこも
だらっだらタオルが必要な汗っかきでいっぱいだ!
今日の立夏のハンカチはかわいいハンカチ。
広げるとひまわりの色の黄色。
でもあんまり使わなくて
真っ白タオルをお風呂の戸棚から引っ張り出してきて
みんなにはーいってお届けしては
首筋をしっとり拭いて
あらまあ今日リカちゃんセクシーじゃんって思ったり
愛らしい小顔を
びっしょり耳の裏までシツヨウに吹いたり
シャツの下にタオルを突っ込んでごしごしするようになると
あれー……
女の子なのにな?
みたいな。
どのあたりがいけなかったんだろうね?
ぜんぶぜんぶ暑さが悪さしたのかな?
家の中にいたらこのままではどうなってしまうかわからない。
夏だってもっと乙女力を落とさないためにきたえないとまずいな!
というわけで、おでかけ。
ちっちゃい子を引き連れて公園に行こう!
立夏おねーちゃんについといで!
あんまりリカひとりに任せると心配だからって、氷柱ちゃんもついてきたけど
人数は多いほうが楽しい。
はずなのに。
オニーチャンがご用事でいっしょじゃなかったのがさみしい……
かわいいいっぱいのいもうととおねーちゃんがいても?
ともかくなにしろ
夏は楽しまなくちゃいけない季節。
近くに広い川もある公園。
水の上を渡る風が
すずしげー……
そよそよ。
こんな涼しい風が吹いてきたときは
一瞬だけリカもおとなしくなるんだって
氷柱ちゃんも感心してた。
耳元をくすぐられながらもリカは知っている。
この風いいな。
こんなに気持ちいいのも
夏のいいところなんだなー……
目を閉じて。
手を当てて集める、耳に聞こえる大きさでもないそよ風のおと。
やさしい呼吸。
集めてお土産に持って帰れたらいいのにな──
家で広げて20人きょうだいみんなでわけたら
たちまち気配もなくなってしまうくらいのささやかなおくりものだけど。
それでも、持って帰れたらいいのに。
全身で受け止めてみたら
少しはリカのシャツの中にもぐりこんで
玄関で靴を脱いで泥を払い落とすときに
あわててオニーチャンに抱きついたら、伝えられる?
あれ、公園帰りの立夏はなんだかさわやかではないだろうか。
みたいな。
早起きしたときはプリキュアを目当てにしているリカが
とつぜん見せてあげたすがたは
それは、何かの香りを感じてふっとおどろいたときには消えている
水の匂いのような。
そうだったらいいのに!
汗くさくなく
けものくさくなく
いいなーって思ったものを持てる限りの巨大な袋に詰めて運ぶ夏のサンタクロース。
そうだったらな。
だけど、なかなか無理な相談なので
追いかけっこして遊んで
膝にも腕にも擦り傷をこしらえて
転びまわったあとの
汗でべとつく砂の匂いでいっぱいになって
ただいまかえりました!
腕を引っ張って誘った氷柱ちゃんと
きずに染みて今日は一緒にお風呂で悲鳴を上げると思うんだー。
やじゅうのような叫びが聞こえてきても、おどろかないでね?