星花

『新しい特技』
黒猫は──
見なかったですけど
かわいい模様の三毛猫なら歩いていたのを見ました。
茶色の細い腕でぐっと伸びをすると
くるくる辺りを見回すきれいな目のまわりは
白い毛と黒い毛が交互にこっちを見つめるの。
もともと猫は動いてるだけでなんだか楽しい子が多いけど
ちょっとおしゃれをしたみたいな色合いは
ますます目が離せなくなりますね!
というわけで星花はお力をお貸しすることができないです。
近い場所で見かける二匹ということは
お友達だったり、カップルだったりするのかも?
それとも仲のいいきょうだいだったりとか。
猫だって、いつも一人だと寂しいんだし
こっそりついていったら
仲良くしているところを見つけられるかな。
お兄ちゃんは、道行く気まぐれな野良猫に
ちょっとふりむいてもらったり
近寄ってきてもらったりするのは得意なほうですか?
追いかけるのが好きな夕凪ちゃんはあまり相手にしてもらえなかったり
なぜか、放っておこうとした氷柱ちゃんの後をちょこちょこついてきたりして
うまくいかない相手。
思い通りにならない強敵を前にした時、
鍛えた技と老練な経験と、あとはあきらめない心が味方になるという感じでしょうか!
たとえば猫の鳴き真似で呼ぶ腕前は
星花、ちょっと鍛えたほうなんです。
自分が猫になったような気分で自分をうまくだましつつ、
お友達に会いたくて来て欲しいと強く願い、
こう──小さく様子をうかがう声からはじめたら
耳を澄まし、気配がありそうな方向をある程度は勘で当たりをつけて
次第に喉を震わせ、思い切り良く行動にうつすのです!
でも、今日はどこにもそれらしい影を見ないね。
星花のつたない特技では呼び寄せられないでしょうか?
本当ならもう少し欲張って技術を積んで
たのもしい文武両道になるみたいに
猫の物真似も、知識を駆使して探る知恵も優れていればと思うんですが
さすがに立夏ちゃんや霙お姉ちゃんのように
枝や葉っぱを踏みしだいて進んだ痕跡や
隠れられそうな場所を見つける観察力などは
まだまだなのです。
はーあ、もっと力があったらな。
お兄ちゃんに自慢できることがもっといっぱいあったらよかったのにね。
ふにゃーお
ぶにゅう──
どこにも姿は見えないです。
いつもの愛嬌のある顔を見せたなら
仲良くなってもらえるまではあと一歩なの。