『キャッスル』
忘れ物はない?
たくさん増えたおみやげものや
かばんをぱつぱつにするせんたくもの。
お風呂場でようやく乾かしてたたんだ水着、
それから袋に半分くらい残ったおやつ。
電車の切符も、残りわずかな日焼け止めも
ちいさいあさひもぜんぶ確認して
とうとう一週間の旅行から帰ってきました。
ふー。
ただいま!
長かったようで短くて
早く遊び慣れたおもちゃにあいさつしたいのも
あとほんの少しの時間だけ、海風の届く景色を見ていたかったのも
どちらも切り離せない確かな気持ち。
思い出を詰め込んだ荷物を持って
いろいろなことがあった街はぐんぐんと遠ざかり
泣いて遊んでまじめにして
おまけでまだまだ騒ぎも大盛り追加の電車の旅を終えたら
見えてきたマリーたちのお城。
みんなの分は部屋が足りないって話があってもそこは仲の良さでカバーしている
ここはキレイなホテルと比べたらまあまあ足を伸ばせて
オーシャンビューよりも少しはゆったり気分で過ごせる場所。
テレビもわずかに小さくなったとしても
みんなで目を丸くしておどろきの体操の演技を見るには
並んでお尻を詰めて、そしたらちょっと安心できるソファ。
キッチンのほうからつまみぐいする霙お姉ちゃまの怒られる声が届くと
ようやく帰ってきた!
って感じになるわね!
やっぱりフェルゼンも
あれは味見というよりつまみぐいだって思うでしょ?
旅先では食べすぎたりする子や、苦手なものが多い子を見つけて
体を壊すと大変だって気をつけていた霙お姉ちゃまも
どこかのびのび。
海よりも開放感あふれる場所があるって不思議なことね!
長い移動の後で
気兼ねなくのびーってできるし。
ま、暑かったのもあってお疲れというか
だらーって感じもあるけど
たぶん今日はこのままみんなで早く寝てしまったら
明日の朝には元気を取り戻した子が
どうなるかわからない。
誰より体力を残して帰ったヒカルお姉ちゃまも
久しぶりのお風呂掃除にテンションがあがったら
お湯が溜まる前にフェルゼンの肩を借りておねむ。
でも、大好きないつもの眺めが目の前に帰ってきたら仕方ないわ。
すぐにみんな旅行の疲れを吹き飛ばして
やりたいことばっかり頭に浮かんでしまうのね。
お盆のあともずいぶん汗がだらだらの
あといくらか続く激しい夏は
いつも過ぎてしまえば暑さなんかより
思い出すのは楽しいことばかりになるはずだもの。
じっとしているのが苦手になるに決まっている。
おかえりなさい、
マリーとフェルゼンとみんなのおうちへ!
単純に考えたら
今日や明日くらいはゆっくり休んでもいいかもしれないけれど
夏の太陽はそんなことを許さない。
どこにいてももぎたてフレッシュ
楽しいことを探してばかりで変わらぬ女の子たち。
たいへん!
旅が終わって気が抜けた顔のフェルゼンの後ろから
野生の猛獣のように爪を立てて飛びかかるマリーの姿が
自分でも変えられない確かな未来を見るように目に浮かぶわ。